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「日本の学校では
いじめられる」が定説!?

外国にルーツを持つ子どもたちをめぐる「いじめ」。
(詳しくは、3月7日公開のNHK NEWS WEB記事
「いじめられる理由を教えてください」をご覧ください)
外国にルーツを持つ子どもたちを支援する人たちから必ずといって聞くことばです。
私たちが取材を始めたのも、そうした声がきっかけです。

でも実態を知ろうにも、データも情報もほとんど見つからないため、
できるだけたくさんの当事者や関係者から話を聞くほかありません。
今回は、東京・福生市のNPO法人「青少年自立援助センター」で
およそ10年間に30か国以上、700人近くの子どもたちを支援している部署の事業責任者を務める、
田中宝紀さんに話を聞きました。

「いじめを経験してない子どもを
探す方が難しい」

--外国にルーツを持つ子どもたちの取材をしていると、多くの子どもたちがいじめられた経験があるという話を聞きます。


私たちのところには、年間100人以上、外国にルーツを持つ子どもたちが来ますが、いじめを経験していない子どもを探す方が難しいんです。

いじめにはいくつかのパターンがあります。まず、親が外国人、名前がカタカナ、見た目が日本人と違う。ルーツが外国にあるということ、日本人と違うことでいじめの対象となることがあります。これはルーツが違うということに対する寛容度の低さを表しています。

例えば、私たちが拠点を置く福生市には、アメリカ軍横田基地があるので、アフリカ系のアメリカ人にルーツを持つ子どもたちがいます。

彼ら・彼女たちは、その肌の色の違いから「汚い、うつる」と言われます。また、外国にルーツを持つ多くの子どもたちが「自分の国に帰れ」と言われるんです。

--ことばの問題も大きいと聞きます。


そうです。小学4年生のときに来日したある男の子は、当初、日本語がわからず、みんなが自分の悪口を言っているんじゃないかと思って、「全員が敵」だと感じたそうです。

ただ日本語がわかるようになると、誤解もあったのかもしれないと受け止められるようになりました。日本語がわかるようになるのは、恐怖心を緩和する一つの手段です。

一方、外国人が日本語ができるようになっても「3年たっても日本語が完璧にできないのか。バカじゃないか」と言われるケースもあります。こうした経験から、学校でひと言もしゃべることができなくなってしまった子もいます。

学校で安心して話すことができないというこれらの例は、ことばに対する寛容度の低さを示しています。

違いを受け止める力

--では、「外国人」だからいじめられるケースが多いのでしょうか?


マイノリティーである外国人に矛先が集まりやすいのは事実です。ただ、日本人どうしのいじめと、外国人に対するいじめの根っこは同じです。 子どもは「外国人だから」というよりは「違いを受け止める力」が弱いので、自分たちと違うことを理由に攻撃してしまいます。

こうしたことが起きた時に、親が子どもたちの発言や行動を修正していけるかが重要ですが、多文化を背景にしたいじめに対する経験値が少ない親が多いのも事実です。 こうした親のもとで「違いに対する寛容さ」を育めていないことが、子どもたちの態度に出てしまうんです。

先生にも同じことが言えて、先生たちにも外国にルーツを持つ子どもたちに対して戸惑いがあります。 多文化共生を学ぶ機会もなかった先生たちも多いですから、ダイバーシティー教育(※1)を取り入れていくべきだと思います。

※1 ダイバーシティー教育…人種、国籍、ジェンダー、年齢、障害、宗教、価値観などが多様であることを理解し、相互に尊重する態度や行動を促す教育のこと。

「日本の学校ではいじめられる」が定説

--いじめを受けた子どもたちにはどんな影響が出ますか?


不登校になるケースもありますし、不登校にならなくても、日本語の支援をしてくれる人がいないと教室に入れなくなってしまう子どももいます。

こうしたこともあって、外国人のコミュニティーでは「子どもを日本の学校に入れるといじめられる」というのが定説になっています。 このためチャーチスクールという私塾に通わせている親もいますが、高校進学に必要な出席日数にカウントされないと知って、あわてて公立学校に子どもを入学させたケースもあります。

多様性を当たり前にする

--違いに対する寛容度を高めるためにどんなことが必要でしょうか?


海外だと、キャラクターの肌がいろんな色をしていたり、着せ替え人形が車いすに乗っていたり、多様性を取り入れたおもちゃが販売されています。 これは、子どもたちにとって多様性を当たり前にするという一つの例です。多様性への感度を小さなころから高めていくことに地道に取り組んでいくことも必要だと思います。

また親に対しても、ダイバーシティー教育を行っていく必要があります。そうすることで、外国にルーツを持つ子どもたちが安心して暮らせる環境を作っていくべきです。 例えば8割の人たちに理解がなくても、2割の理解のある人たちが守ってくれるというい安心感を作るべきなんです。 先生たちの研修も必要でしょう。社会全体で多様性を受容するというメッセージを出すことができるかどうかがカギではないでしょうか。

ファクトに基づいて無用に怖がらない

--この4月に外国人材の受け入れを拡大するための改正出入国管理法が施行されました。将来的には外国にルーツを持つ子どもたちがさらに増えることも予想されます。


今回の法案に対する反応を見ていて感じたのは、全くいなかった外国人がいっきに数十万人に増えるというイメージで語られているものが多かったことです。 実は、法律が改正される前から日本に住む外国人は、年間10万人以上のペースで増えています。そして、すでに260万人あまりがこの日本に住んでいるんです。

これは、京都府の人口と同じ規模です。このうちおよそ4割は永住者と定住者(※2)という在留資格をもつ人で、日本に今後も住んでくれる人たちです。 彼ら・彼女らが日本で生き抜いてきた経験を生かしてもらいながら、外国人の受け入れ体制を整えていったらどうでしょうか。

すでにこれだけの外国人が日本に住んでいるというファクトを抑えていないと混乱を引き起こすだけです。事実に基づけば、無用に怖がる必要はありません。

※2 定住者…日系ブラジル人などが日本に滞在するために取得する在留資格。