1. トップページ
  2. ECMOや人工呼吸器 医師や家族に迫られる選択
藤谷茂樹

藤谷茂樹

聖マリアンナ医科大学 救命救急センター長

藤谷茂樹

2020年11月

医療従事

重症化との闘い

取材日:2020年11月26日

ECMOや人工呼吸器 医師や家族に迫られる選択


 

第3波の現状―「幅広い年代が重症化」

――先生、患者さんの年代はどういう傾向ですか?

先週と今週で、目まぐるしく患者さんの年齢層が変わってきました。先週までは70代、80代の高齢者が多かったんですが、今は30代から50代、60代の方まで、若い人たちが重症化してきている状況にあります。これまでは高齢者が多くて、若年者はなかなか感染しないのではないかと、思っていたのですが、今週に入って若年者が入院してきました。しかも、重症化してきているという状況に少し驚いています。

 

――患者層が幅広い世代に広まってきたということでしょうか?

患者さんの年齢層が30代から80代と幅広くなってきて、どこに年齢のピークがあるのか、分からない状況になっています。これは、市中感染がかなり拡大傾向を示しているのではないかと思っています。

 

ECMOは“治療”ではなく“良くなるまでのつなぎ”

――コロナの患者さんを診療するうえで、人工呼吸器やECMOも含め、いろいろなことを考えると思います。どういったことを考えて処置をしていくのでしょうか?

僕たちはECMOを“治療”としてではなく、“ブリッジング”と言って、「良くなるまでのつなぎ」という形で考えています。しかし、どうしても高齢になると、つなぎとしてECMOを導入しても、なかなか治癒が難しいケースがあります。途中で合併症を起こして、不幸な転帰をたどってしまうということもあり、ある程度の年齢で、ECMOを導入するかしないかを決めざるをえないと考えています。高齢になると、なかなかECMOを導入することが難しく、あとは人工呼吸器だけの管理になるので、治療の限界が生じてしまい、不幸な転帰をたどる人たちが多くなってくるというのが実情です。

 

――人工呼吸器に関して、挿管するかしないかは、どういうプロセスを経て決定しているのでしょうか?

急性呼吸不全が起こった場合に人工呼吸器につなぐかつながないかという選択は、自分で事前に、意思表示されている方に関しては、その意思に則って決定します。自分で意思表示ができない方に関しては、ご家族に(ご本人がどのような意向をお持ちか考えてもらいながら)人工呼吸器をつけるかどうかをお聞きして、ご家族が「これ以上の治療はやめてください」と言われれば、人工呼吸器なしで治療するということもあります。高齢者で人工呼吸器をつけると、2週間、3週間といった長期間になって、寝たきりになる可能性があります。もともと寝たきりの人で患者さんご本人が意思疎通できない場合は、ご家族が「これ以上苦しめたくない」と言われる方もおられますし、「治療を継続してほしい」と言われる方もおられます。それは、家族によってそれぞれです。

 

重い選択の場で考えるのは「倫理の4原則」

――新型コロナの患者さんで生と死ということを考えた場合、ECMOや人工呼吸器をつけるかつけないかなど、選択を迫られる場面があると思いますが、どんなことを考えていますか?

僕たちは、常に患者さんが死と隣り合わせの状況のなかで働いています。その時にいつも考えているのは、「倫理の4原則」というものです。まずは、「患者さんの自己の意思を尊重する」ということですね。患者さんがどこまで治療してもらいたいか、病状を説明して患者さんの意思に従って治療する。2つ目は「患者さんにとって最良の治療をする」ことです。それから、「患者さんに全く効かないだろうというような治療、害を与えるような治療は提供しない」「自分の親族に接するように患者さんに平等に医療提供をする」という原則があります。高齢の患者さんが自分の祖父母だった場合、どこまで(治療を)するのかを考えると、ECMOで治療を粘ったとしても、恐らく寝たきりになる。もしくは助からない。苦しんで最期を迎えてしまう可能性がある。それがわかっている状況なら、そういう治療はしない選択肢(害を与えない)もあるということです。この辺りを、ご家族と何度も相談をしながら治療法を決定するようにしています。

 

――それは人工呼吸器についても同様ですか?

そうです。人工呼吸器をつけたら、もう二度と人工呼吸器が外れないといった場合は、最期まで苦しんでお亡くなりになる可能性があります。そういう苦しい目に遭わさずに、最期は安らかに眠れるようにするという選択肢も、ご家族に提示をしています。ご家族が治療を望まれたり、本人も最後まで闘う意思があると生前に言ったりしていれば、治療を継続します。人それぞれによって治療が異なってきます。

 

――特に新型コロナに関してだと、どういったことがありますか?

新型コロナと普通の肺炎との違いは、治療期間が長くなるということと、呼吸不全の重症度がより高くなるという、この2点だと思います。新型コロナウィルスに感染すると、普通の肺炎よりも、長期間の人工呼吸器管理になります。高齢者の場合、もともと体力が落ちているので、人工呼吸器を外せなくなる可能性もあります。僕たちは、そういった高齢の患者さんに対しては「倫理の4原則」を用いて、どこまで治療するのかをチームで話し合って、最終的にご家族に提示をしています。ご家族が治療を望まれるのであれば、治療を続けていきます。

 

――そうなりますと、通常よりも、さらに重い判断、命に対する考えを、改めて突きつけられる機会が多いと思うんですが。

ええ、そうですね。高齢者の(新型コロナウィルス感染による)重症肺炎の方が来られたら、重たい医療提供の選択肢を提示しなければならない。その辺りは僕たちにとっても非常にストレスを感じています。