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中谷友樹/水野貴之

中谷友樹/水野貴之

東北大学大学院 教授/国立情報学研究所 准教授

中谷友樹/水野貴之

2020年12月

公衆衛生

研究者

取材日:2020年12月 9日

ビッグデータを読み解く (3) ~人流で考える効率的な行動制限~


 

感染の拡大傾向は人の暮らしを反映している

――水野先生はこのデータをご覧になってどうですか、直観的に。

水野 人の流れっていうのをものすごく感じますよね、このデータセットは。人の流れ、生活圏っていうコミュニティが、完全に一体化しているという所に(感染が)あると思います。

先ほど中谷先生からあったように、東京は一体ではないんですよね。もちろん多摩のほうとは違うんですけど、中心部を見ただけでも全然違って。ここに隅田川が流れているんですけども、(感染報告を示す)点が全部、隅田川の手前で止まるんですよ。要は、橋を渡って隅田川を越えるか、内側で生活するかっていう。生活圏がそもそも違うので、(隅田川の)中で密度が出ると、地形でトラップされて、外側にはなかなか出てこないっていうのが見えてきますよね。

中谷 当然ですけど、鉄道とかも明確な関係が見えますよね。鉄道駅が小さい繁華街を持っているので、あちこちで飛び火していくっていうのが見えますよね。

水野 見えますね。

 

――感染が人の暮らしを反映するんだというのに驚きました。

水野 人がうつしていますからね。人が媒介して運んでいるので、人の流れっていうのをちゃんと把握しないと。基本的に、県単位で政策が打たれているわけですけども、県っていうのはもともと、どうやって境ができたかっていうと、地形、多摩川の北と南で神奈川と東京を分けるみたいになっているので、確かに人の流れと県っていうのは関係するんですけど。東京ぐらいまで大きくなってしまうと、一都三県全部でいうと、それはさすがにやり過ぎで。人の流れを見て、感染の拡大を見て、整理する必要があるのかなって思いますよね。

中谷 逆に、埼玉とか川崎辺りとか、東京とほとんど地続きみたいな所もあったりして。そういうのが本当は連続して見る必要がある所ですよね。

水野 大宮から西側と、大宮から東側っていうのは、人の流れって全然違って。大宮とか越谷とかっていうのは全部一体化しているので、やっぱりこのデータセットを見ると、そちらのほうが密度は高くなるけど、反対側は薄くなるっていう形なので。

 

新宿、渋谷、池袋 都心の繁華街は人流が一体化

水野 東京の繁華街って、西側に多いわけなんですけど、その西側の所で働いてる人たちっていうのは、千葉に住んでいるっていうよりも、大体横浜に住んでいたり、東京の立川とか、中央線沿線沿いに住んでいるので、斜めに伸びやすくて、縦にも横浜のほうに伸びやすくなっちゃいますね。だから延焼しやすいっていうのは、まさに働いている人たちが、ここから通勤して、そこで飲むとか、そもそも会社でみんなが会うってことがあると思うんです。やはり生活圏がつながっているっていうところがポイントですね。生活圏がつながってない場所っていうのは、放っておけば火ですから消えてきますから。

中谷 中心が消えればですね。横浜は横浜で、それなりの中心性があるので、郊外の1つではあるけども、飛び火した時の核がどうしてもできちゃうんですよね。

水野 ここのネットワーク(東京から横浜)が強いので人が移動して、しかもここ(横浜)には火が燃えやすい場所があって、そこでワーッて燃えちゃって、そうするとなかなか消えない。やっぱり徐々に消していくんであれば、このネットワークをできるだけ切るようにして、あとは中で火が燃えているゾーンをどんどんどんどん狭めていって、ジュッと消してやるっていうんですかね。

 

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中谷 過去の経緯を見れば、第2波でもある程度、下火になってくると、横浜とかは消えてくるので。だからやっぱりいちばん難しいのは、東京の都心部の繁華街が連坦(れんたん)している、例えば銀座とか赤坂とか、新宿、渋谷、池袋。いろんな所がありますね。

水野 あります。

中谷 だから特定のどこかがいけないって話じゃなくて、やっぱりそういうのは、連坦しているっていう形で、いろんな人がいろんなふうに動く状況の中でコントロールが難しい。

水野 池袋、新宿、渋谷をはいかいしているような形で、人流が流れているんですね。もしそれぞれでとどまっていてくれれば、どこかが燃えた時にすぐ燃え移ることはなくて、1個で消せればそこはまず終わり、ここで終わりって1つずつできるんですけど、全部一体化しちゃってるので、それができない状況ですね。

中谷 その時もあれですよね。ある場所が危ないって言われたら、別の場所に移動するとか。

水野 そうなんです。

 

全国各地とコミュニティをつなげる東京が感染の核に

水野 人流ネットワークで見た時に、例えば、羽田空港だけ違うコミュニティになっていたりするんです。だから、全国につなげた時に、羽田空港だけ大阪コミュニティが入っていたりするんですね。

中谷 なるほど、なるほど。東京が札幌コミュニティ、そんな感じですね。

水野 千歳が何コミュニティに入っているかとか。そこも人流で確率的に飛びやすくなって。だから水際っていう所、そこで止めてくれると入って来なくなる。コミュニティ解析を見る時には、どこのコミュニティとどこのコミュニティをどの場所がつなげているのかっていうことを見ることが大切ですし、整理しやすいですよね、そっちのほうが。

中谷 そうすると、北海道とか沖縄って東京とくっついている。東京から広がっちゃうっていうのが難しいところですよね。関西とか中部は、2波のあと1回、細るんですよね。だけど、東京って細り方が全然足りなかったというか、少なかったと思うんですよ。当然、東京が拡大すれば、それがいろんな所に飛び火しているっていうことは大きいと思います。

 

――日本全体で見た時に、そこに東京っていう核が。

中谷 そうです、そういうことです、ネットワーク的にもそういうこと。

水野 ネットワーク的にもまさにそうです、ハブは東京になっている。

 

――名古屋の第3波は東京の飛び火なんですか。

中谷 それだけではないと思うんですけど、でもそれも効いていると思います。内部にある残り火っていうか、1回縮小したものがもう1回拡大したっていう面ももちろんあると思いますし、外から入って来てっていう部分も当然あると思いますね。

水野 さすがに、名古屋ぐらいいろんな所とネットワークがつながっていると、どっちがどっちだかっていうのはわからないですね。

中谷 区別が難しいと思いますね。

水野 金沢と富山みたいな、そういう所だと多分見えるかな。ネットワーク的には、東京と金沢がネットワークでつながって、そこに横に富山がつながるような形になるので、金沢に飛び火しなければ、富山には飛び火しないような形に人流ネットワークはなるのかな。

中谷 結構、大都市圏3つがつながっているような感じなんですけど、それに比べると、福岡とかが若干違う動きなのかなっていう感じですね。

 

行政単位でではなく、コミュニティの中で火を閉じ込める

水野 (感染の)火を消すにはどうすればよいのかっていうと、要はコミュニティをまたいで、様々なコミュニティの人々が、ある地域を共有しないで、つまり、皆が同じ所に行かないでもらいたいと。

中谷 コミュニティの中の、火種になっている中心っていうことですよね。

水野 実はコミュニティっていうのは、レイヤーがあるわけですね。県があったり、市があったりっていう、レイヤーがあるってことと同じように、コミュニティもレイヤーがあって。

中谷 階層ってことでいいですか?

水野 そうです。その階層をもっと細かくしたやつが実はあって、東京の中も1つ1つ、コミュニティが分かれているっていう形です。だから、先ほどの例から推測されるに、(感染報告の多い)ここと対応しているというような形で、コミュニティを(抜き)取ってこられる。こういったものをちゃんと行政が理解をして、その中に閉じ込めるような形で制御してやるっていうことが大切かなと。逆に言えば、人っていうのは、コミュニティとコミュニティの間をまたいではほとんど移動しないので、こちらのコミュニティの人まで行動制限していただく必要は全然なくて、そこは大丈夫なので動いてもらって。逆にこういうコミュニティ内で、できるだけ火を閉じ込めるっていうことが、延焼を防ぐうえで大事かなと、人流から見えることですね。

 

人流をうまく制御すれば、経済活動も感染対策もできる

水野 今、関東一円で全員動きを抑えてくださいって言うんですけど、そうじゃなくて。こことここの生活がつながっているので、これだけ流れてきてしまう、京浜東北線ですね。横浜とか川崎とか。逆に千葉市までは、実はあんまり行かなくて。やはり人の流れを見ると、この辺で人が流れてるんですよね。

本来、この火を小さくするのであれば、近場の人だけ出勤して。つまり横浜まで延焼しないようにするためには、横浜から東京に出勤する、遠距離の人は控えてくださいみたいなことをやると、実は徐々に徐々に小さくできるかもしれないというのはありますよね。

中谷 そうすると、東京大都市圏の密度を維持したままでも、人の動きだけね、長いレンジ(距離)の移動を抑えることで、こういう感染症の流行対策ってできるかもしれないですね。

水野 できるかもしれないですね。

中谷 でも、都市の密度を減らすこと自体がよいかどうかも、いろんな問題があると思うので。密度が高い都市のほうが、ふだん歩いて生活ができて、環境にもいいし、健康にも望ましい。そういうのが最近の1つのトレンドだったところに、低密度がいいんだって、じゃあ今、移住を勧めるって政策があって、それも1つの解ではあるけども。

水野 確かにそうですね。

中谷 都市の密度を維持しても、人がどう動くかってことをコントロールすることで、感染症の対策ができるんだったら、それもそれで1つの道なんじゃないかなと思いますね。

水野 と思います。そうすれば横浜近辺の人は、横浜に本社がある人とかは、そこで経済活動を行えば(いい)。そうすれば、コロナの密度が薄くなってくれば、こっち側には来ないわけですから、やっぱり人流を制御するってことは、経済活動を維持したまま、感染対策も両方できると。

あと、もしここで(感染の)塊があるとしたら、ここの塊とここの塊をつなげている場所はどこかも見てやって、そこを切るようにとか。そこがどれぐらい今、感染者がいるかどうかを確認すれば、ここの2つの(人の)流れがどれぐらいになっているかっていうのも、最近の人の流れのネットワークの制御の時に挙がりますね。

中谷 だから難しいのが、そういうことだと思うんですね。都心が核になってしまう理由は、都心の中っていろんな方向で移動する人がたくさんいるじゃないですか。だから特定のほうで切れないんですよね。

水野 切れないですね。

中谷 そこが難しいと思うんですね。

水野 それはやっぱり人のデータ全部見て、どこが切りやすいのかっていうのを見て。さっき動画で見た時に隅田川っていう所がすごい切りやすいんだなってことが分かりますし、この辺りもやっぱり川崎が、多摩川でちょうどつなげているので、非常に切りやすいポイントになっている。分けてくれれば、結構制御できるかなと思いますね。

 

ビッグデータの活用で見えざるリスクをあぶりだす

中谷 分かりやすく絵にするってことで、密度で見ているんだけど、やっぱりずっと密度が高い所と、これまでそうじゃなかった所がどこで増えてるかって、結構大事なポイントになってますよね。

水野 あと燃えやすい場所と、燃えにくい場所があるので。東京駅には多分燃えにくい理由があって、新宿とか池袋とか渋谷には、燃えやすい理由があって。まず単純に思いつくとこでは、飲み屋とかが多いんだっていうところがあるんですけど。

もし可能であれば、どこにどういう業種の人たちがいて、どこでどういう商売をどれぐらいしていてっていう。今、そういったビッグデータっていうのはそろっているので。そういったデータをちゃんとマッピングして、人の流れをマッピングして、両方加味してやると、かなり予測っていうか。例えば昼カラオケみたいなやつですか、発生して初めて分かったんですけど、でもそういった情報は分かっていて、空間的にプロットできているんであれば、そこからある程度、まだわれわれの知らないリスクみたいなものが見えてくるんじゃないのかなっていうのはあります。

中谷 多分いろんな課題があって、僕もそういうこと思うんですよ。時空間で見た時に、(感染は)都心が多くて、それから広がるじゃないですか。あるタイミングまで広がらないですよね。この都心っていうのは、例えば2波の場合は明確に新宿なんですけど、そういう所は多分、特殊な社会ネットワークがあって、そこだけでまず最初感染して、それがある時に一気に広がるっていう感じ。だから、なかなかわれわれが持っているビッグデータと普通の(情報)だけでは、見えにくいものもどうしてもあって。ただ、広がったあとは、多分そういうデータで見やすくなるようなものがあると。

水野 見やすくなりますね。人の流れっていうのも、小学生の流れもあれば、お年寄りの流れもあって、やはりそれぞれの人の行動範囲。まず行動範囲がそもそも違う。ある属性を持った人々の移動のネットワークっていうものがあって、それとほかの属性の人のネットワークっていうのは、違うネットワークになっていて。最初のバッと広がった時っていうのは、それがつながってしまって、そうすると一気に広がるっていう形ですね。ネットワークとネットワークがつながってしまって。

中谷 それは多分、予測するのがなかなか難しくて

水野 難しいですね。

中谷 でもそういうものが、逆に視覚化していると見えてくる。だからビッグデータで入れたら、AIでポンッて出てくるっていうものではない。まず情報を見た時に、観察できるものでネットワークの違いがありそうだとかっていうことを理解できるっていうのが、結構大事なのかなと思いますね。

水野 大事ですね。特に日本とかだとね、プライバシーの問題があって、何でもかんでもデータを放り込めるってわけではないですからね。

中谷 実際、感染が発生したお店で、お客さんのプライバシーを守りたいというお店の意向があって出せないとか、いろんな理由があって、結局、感染が追いきれないっていうところも大きいですよね。

水野 大きいですね。

 

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