1. トップページ
  2. 新たな感染ルート、マイクロ飛沫
舘田一博

舘田一博

日本感染症学会 理事長

医療従事

2020年3月

公衆衛生

取材日:2020年3月18日

新たな感染ルート、マイクロ飛沫


 

従来の飛まつ感染だけでは説明がつかない

 

インフルエンザは飛まつ感染、せきやくしゃみで伝ぱすると分かっていますが、そういうせきやくしゃみがない人でも、非常に近い距離での会話のなかで感染が広がるとか、ある程度、距離があっても、それが広がる事例が見られました。すなわち、それが、屋形船であったり、タクシーの中だったり、雪祭りの前後でのテントの中の飲食などです。そういった事例を見ると、通常の飛まつ感染だけでは説明できないものがあるのではないかと思います。

通常の飛まつ感染ですと、吐き出される粒子はミリメーター単位ですから、出るとすぐ落ちて、その範囲でしか広がらないと考えられるわけですが、今回の事例を見ていると、おそらく、もう少し小さな粒子、マイクロメーターくらいの非常に小さな粒子が出て、それが換気の悪い状況の中で漂う、舞う状況の中で、それを吸入して感染する可能性があると思います。マイクロメーターの粒子、マイクロ飛まつということもできると思います。

 

粒子の小ささが、肺の奥で肺炎起こす?

 

おそらくウイルスはもっともっと小さいわけで、マイクロ飛まつの中にも、たくさんの生きたウイルスがいます。それを吸い込むことで肺の奥まで入って、そこに沈着することによって、肺炎が起きてくる可能性があると思います。

臨床で報告されている症例の肺炎の画像を見ると、肺の末しょうの、非常に奥まで届いている、そして、そこで広がっている画像が見られるので、もしかしたらマイクロ飛まつという粒子の小ささが、その中にいるウイルスが末しょうに行って発症している現象につながっていると思われます。

ウイルスは環境に出ると死滅するものですが、最近の報告では数時間、長いものでは数日かかって生き延びていると報告されています。新型コロナウイルスも飛まつの中で数時間生き延びていると最近の論文で報告されています。

 

社会を動かしながら、リスクを下げる対策を探す

 

今回の感染症で私たちが学んだことは、新型ウイルスではマイクロ飛まつという状態を介して、よどんだ空気の中では、もしかしたら激しい会話、大きな声での会話、激しい息づかい、そういった中でマイクロ飛まつが出てきて、それが感染を起こしているという感染の様式を考えていかなければいけないということです。

専門家会議でも指摘されていますが、手が届く近い距離での、大きな声での会話、そして換気の悪い閉鎖環境で、そのリスクが高まることが報告されています。

一番大事なのは人と人が近距離で接する状況を作らないことになります。しかし、そういう中では社会が動いていきませんので、人と人が集まる状況であっても、近くで大声で話さない、あるいは閉鎖された空間の中で、空気がよどむことがないようにするなど感染が広がらないような工夫をすることによって、感染は抑えられると思います。

簡単にできるのは、定期的に窓を2か所開けて、風の流れを作ること。1時間に1回でもいいから、そういうことをやることで感染のリスクを、かなり下げることができるようになると思います。

まさにライブハウスは、よどみの空気の中で、大きく叫ぶ、そういった状況があるとするならば、これは感染のリスクが高い場所であったということがわかります。しかし、そこでも、例えば換気に注意して、あるいは人と人の距離を考えて、うつらないような対策をとることによって、安全に楽しむことができる環境を考えていくこともできると思います。会話でも、近くで、大きな声だとうつってしまうことがあると分かれば、それを抑えるなり、防ぐ対策もとれると思います。

もう一つは、接触感染のリスクもあるわけです。手指衛生をしっかり徹底することも、日常生活の中でわれわれができることだと思います。

 

わかってきたマスクの有効性と付き合い方

 

――会話がリスクになっている?

このウイルスのもう一つの特徴として、口の中の唾液腺に感染を起こして、唾液の中に、たくさんこれが出されてくる。普通の会話のなかでは、そんなに唾液が飛び散っていると思っていないわけですが、ただ、非常に小さな粒子の飛まつ、マイクロ飛まつと呼ばれるものが会話のなかでも出ていて、近くにいる場合は、それを吸い込むことによって感染が広がる。そういうことが明らかになってきたと思います。

会話によって飛び出したものが2メートル離れた人に、まさに行っているわけですね。気付かない間にマイクロ飛まつを吸い込む、そういったリスクにさらされているという状況になると思います。

 

――感染を防ぐ対策は?

マイクロ飛まつは普通の日常の会話のなかでも知らず知らずのうちに出てしまう。それを防ぐという意味においても、マスクが非常に効果的であることが画像的にもとらえられ、可視化されてきたと思います。

今までマスクというのは、せきをする人の飛まつが飛ばないようにというかたちでやっていたわけですが、会話の時の発声による、マイクロ飛まつそのものを抑えることが明らかになったということで、非常に大事な証拠、エビデンスになるのではないかと思います。破裂音でマイクロ飛まつが出やすい映像がありましたが、そういう状況でもマスクがそれを抑えていることが明らかだと思います。

マスクはつけ方や素材が大事だと思います。うまくつけていると、市販の紙マスクでもマイクロ飛まつを抑える効果が出るということですね。しっかりつけるというのは、なかなか難しいけど、鼻のところとか、あるポイントをちゃんと押さえてあげれば、それが抑えられるということだと思います。

 

――マスクに抵抗がない文化だったことが感染拡大を防いだ?

日本ではインフルエンザのシーズン、あるいは花粉症のシーズンにマスクをつける文化を身につけていたわけですが、おそらく結果的にみると、マスク文化が新型コロナウイルス感染症を、広げないということにおいて大事だったのかなと感じます。いろんな情報が蓄積されるなかで、アメリカのCDCが、あるいはWHOが、おそらくそれに気づいてマスクを推奨してきたという流れになるのではないかと思います。

 

――これからも重要な役割を果たしますか?

マスクはおそらく大事。しかし、いつでもどこでもマスクをつければいいかというと、これは考えなければいけない。特に今から暑くなる。マスクをつけると体温が上がりやすくなりますから、熱中症のリスクを高めることも、注意しなければいけないポイントです。そういう意味では、どういう状況でリスクが高まるか、どういう状況でマスクをつけなければいけないかを考えていくことが大事なのかなと思います。

私もいつも、マスクをこうやってポケットに持っていて、必要な時につけるし、終わったらまたしまってというかたちをとっています。それこそ状況に応じたメリハリをつけたマスクの使い方、メリハリをつけた行動変容を目指していかなければいけないと思います。

自分がもしもウイルスを持っていたなら、マスクを触ったということは、私の手にはウイルスが付いているかもしれない。このときに、手が汚染したと思うならば手指衛生を徹底しています。まさに想像力を働かせながら、どういうふうにウイルスがいるかを考えながら、その時その時に遮断してあげる対策が必要かなと思います。

 

――マスクとの付き合い方を考えながら生活していくことが重要?

この新型コロナウイルス感染症は、なかなかすぐに消えていかないですね。そういう意味では、長い付き合いをしなければいけない。まさに、ウイズコロナの時代になってきているわけですが、そんな中で持続可能な対策のとり方、マスクの使い方も含めて、これを考えていかなければいけない。なんでもかんでもだめと言うのではなくて、長く、持続可能にできるかたちに行動を変えていくことが必要になると思います。

決して、この病原体で終わらないで、おそらく何年かしたら、新しい病原体が出てくるという時に、こういう経験を基に、われわれは備えていかなければいけないと思います。

 

関連番組

NHKスペシャル「“パンデミック”との闘い~感染拡大は封じ込められるか~」(2020年3月22日放送)