2022/5/13

各地からハルゼミのたよりが届いています!

三好智和(日本セミの会)

ハルゼミはおもに海沿いのクロマツ林や丘陵地のアカマツ林でみられる小型のセミです。「田植えの時期に鳴くセミ」として,かつて人とのなじみの深いセミでしたが,都市部では開発や環境の変化などによって多くの生息地が消えていきました。さらに近年では,マツクイムシなどの影響で全国的にマツ枯れが発生し,各地でハルゼミの棲みかがさらに消えつつあります。みなさんのお住まいの地域ではハルゼミの声は聞こえてきていますか?

 

今年は九州地方から3月末にハルゼミの初鳴きのたよりがありました。4月12日に佐賀県唐津市の虹ノ松原へ訪問したところ,マツ林を取り囲むほどのハルゼミの声が響いていました。

 

ハルゼミ♂・虹ノ松原にて

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♂脱皮殻・虹ノ松原にて

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4月に入り,まるで桜前線のように全国津々浦々からハルゼミのたよりが届き始めました。香川県高松市の栗林公園や,愛知県田原市の伊良湖岬をはじめ,東京都では多摩地方からなど。神奈川県真鶴町では,今年は4月下旬に脱皮殻がみつかり,5月4日に同地に訪れると真鶴半島周辺のクロマツ林から複数のハルゼミの声が聞かれました。

 

♀脱皮殻・5月4日 真鶴半島にて

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ハルゼミの鳴くクロマツ林・5月4日 真鶴半島にて

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ハルゼミは,新潟県・福島県(南部)を北限に本州・四国・九州(本土)地方まで分布が確認されています。マツ林でみられるセミなので,生息地を探すのはそれほど難しいわけではありません。晴れた日にマツ林から「ギー・ギー・ギー」という聞き慣れないセミの声がたくさん聞こえてきたらハルゼミです!(曇りや雨天時には鳴きません)

 

ハルゼミはマツの高い枝先で鳴くことが多く,なかなか成虫を観察することはできません。ハルゼミの声が聞こえたら,鳴き声と一緒にその風景を動画で撮影して投稿してください!地域によって異なりますが,ハルゼミは6月中旬ごろまでみられます。

 

さらに, 5~7月にかけて,北海道の平地や東北地方の低山地,関東から本州・四国・九州(本土)地方では高山地でみられる「エゾハルゼミ」が姿を現しています。

 

資料・エゾハルゼミ♂

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「ミョーキン・ミョーキン・ケケケケ」といった面白い鳴き声のセミです。新緑の山地へ出かけた際には,ぜひ耳を傾けてみてください。

 

そして,梅雨入りした沖縄地方では,日本で一番小さい「イワサキクサゼミ」,ニイニイゼミの仲間である「クロイワニイニイ」が鳴いている頃です。こちらの情報もぜひお寄せください。

 

まだまだ知られていないセミのことや,セミの棲みかを知るために,今年もたくさんのセミ情報をお待ちしています!