“音楽×感動”リサーチ

2022/5/16

「音楽の喜びを科学する」とは?

藤井進也(慶應義塾大学環境情報学部准教授)・ 本多栞(慶應義塾大学医学部精神神経科 博士課程3年)

私たちは普段、日常生活の様々な場面で音楽にふれる機会があります。例えば、レストランでBGMが流れていたり、カラオケに行って歌を歌ったりします。パンデミックが起きている現在の世の中では、感染による身体的な体調不良だけでなく、感染する不安・長期間のリモートワーク・感染後の対人関係など様々な理由から精神的な不調が生じるといわれています (e.g., Santomauro et al., 2021)。

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そんな中で音楽は、人々のこころの安らぎに重要な役割を果たしていることが明らかになっています。例えば、イタリア・アメリカ・スペインで約1000人を対象に行われたアンケートでは、ロックダウン期間中に心理的な苦痛を回避するために「音楽を聴取すること」が最も多く用いられていることが明らかになりました。また、音楽に関わる時間が長ければ長いほど、うつ症状が減少することがわかりました (Mas-Herrero et al., 2020; Ferreri et al., 2021)。このような研究の結果や、私たちの日常体験から、音楽は多くの人々のこころに安らぎをもたらす大切な存在であることが分かります。

 

 

ですが、誰にとっても音楽は心地よいものなのでしょうか?

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近年の研究では、音楽にものすごく大きな喜びを感じる人もいれば、音楽にあまり喜びを感じない人もいることがわかっています(Mas-Herrero et al., 2013)。

 

 

このように、音楽を感じ受けとるこころの性質(音楽感受性)は、かなり人それぞれであると考えられます。この音楽感受性の個人差について、海外では様々な研究が近年おこなわれてきましたが、日本人の音楽感受性についてはまだ十分に明らかになっていません。

 

音楽の感受性の個人差を明らかにすることは、将来的に、精神的不調を改善するためのリハビリテーションのパーソナライズ化につながるなど、医療の現場においても役に立つ可能性があると考えられます。

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今後の記事では、これまで海外で行われてきた音楽の喜びに関する研究、アンケートの概要や、そもそも音楽を学問として研究していくとはどういうことなのかなど、幅広く研究の内容を紹介していきたいと考えています。ぜひ、"音楽×感動"リサーチ調査にご参加いただけますと幸いです。皆様のご協力を心よりお待ちしています。