2022/9/16

みんなの「あ」平均化プロジェクト 

最終報告

総勢5万人!“究極の”「あ」ができました

 8月22日、特番の放送中から書き込みが急増し、なんと5万人超(累計)の方に、「あ」を書き込んでいただきました。一時的にアクセスしにくい状況もあったにもかかわらず、本当にありがとうございました。

 

ちなみにすべての筆跡を重ねたものがこちら。

A_all

全ての筆跡

 

 なにやら、5万人の情念のようなものを感じてしまいそうです。

 そして、これをフーリエ級数展開(こちらの記事を参照)を駆使して平均化したものが、こちら。

average_41937

約5万個の「あ」の平均

(読み取り不可能だったものなどを除くと正確には4万9143個の「あ」の平均です)

 

 5万人の「あ」、いかがでしょう。日本の総人口が約1億2500万人ですから、凡そ0.04%つまり1万人に4人が「あ」を書いてくれたことになります。これは結構な数です。みなさんのご協力がなければ、この世に姿を見せることがなかった極の「あ」”かもしれません。これぞシチズンサイエンス!本当にありがとうございます。

 

 

実験の監修者で平均文字の研究をしている明治大学の中村聡史教授に、5万人の「あ」を見た感想を聞いてみました。

teacher_Nakamura

 

(中村先生)単純にきれいな「あ」だと感じました。理想的と言っていいと思います。ただ、スマホで指で書いている人が多いこともあるため、スマホならではのものに少しなっていると思います。例えば、1画目や2画目がちょっと長く突き出しているところなどは指で書くスマホならではの特徴だと思います。

 

 

average_41937 average_717

約5万人の「あ」

スマホに指で入力されたものが多い。

約700人の「あ」

ペンタブレットで入力。8/22特番で紹介

 

ペンタブレットで書かれた700人の平均の「あ」とは確かに少し形が違いますが、どちらもきれいな「あ」ですね。

 

 

どんな「あ」があった?

さて、5万の「あ」の中にはどんなものがあったのでしょうか?

いくつか見てみましょう。

 

A_1 A_2 A_3 A_4 A_5

ひとりひとりの「あ」

 

・・・じ、実に個性的な「あ」が集まっていたんですね。それでも、きれいな「あ」が出来るわけですから、「平均」の力ってすごい!

 

 また、システムが「あ」と読み取れなかったものや明らかに「あ」ではない何かが書かれたものもあり、それらは“ノイズ”として除去したそうです。

 除去したものの中にはこんなモノたちが・・・

 

Noise1 Noise2 Noise3 Noise4 Noise5

画数が3画であれば登録できるため、さまざまなチャレンジがなされていました。

 

 

このノイズはどうやって除去するのでしょうか。中村先生によると

 (中村先生)放送の時のように700件程度であれば目視で間に合いましたが、5万件ともなるとそうもいかずノイズを検出するプログラムを作りました。

とのこと。

 

例えば、

・1画目は左から右へ書いて横長

・2画目は上から下へ書いて縦長

・3画目はクルっと回っている

などのような、「あ」として最低限必要な特徴を備えているかどうかを自動で判別するプログラムを作って検出するという方法です。ちなみに5万3851個あった「あ」のうち4708個をノイズとして除去したそうです。

 

探究して見ると実は奥深い平均の世界。その面白さについて中村先生に聞いてみました。

(中村先生)平均は、作る前はどんなものになるか分かりませんが、実際に作ってみると本当にきれいなものになるんだなという驚きがやはり大きいなと感じます。今回、「あ」以外も集めていましたが、多くの文字において理想的な、自分がこんな字を書きたい!というものになっており感激しました。

今回平均がわかったので、そこからのズレも観測できるようになりますし

そのズレを使うことで、教育などにも応用できると考えています。

 

 

 シチズンラボのみんなの「あ」平均化プロジェクトは一旦終了。みなさま、本当にご協力ありがとうございました。

以前の記事でご紹介した中村先生の研究室のウェブサイト(※NHKサイトを離れます)では、引き続き平均化のため「あ」やそれ以外の文字を集めています。