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コロナ禍でもつながる地域活動のヒント【第4回】

コロナ禍でもつながる地域活動のヒント【第4回】

2020年12月7日更新

新型コロナウイルスの脅威が続く日本。地域で集まることが難しくなり、うつや虐待、孤独死などが増えるのではないかと心配されています。こうした中で、どのようにしてつながりを作り、地域を元気にしていけばいいのでしょうか。「集まれないけどつながる」をテーマに、コロナ禍でも工夫をしながら続けられている全国の地域づくりの取り組みを見ていきましょう。

(第3回はこちら)

スタジオの様子

ゲスト

  • 鎌田實さん(諏訪中央病院名誉院長)
  • りゅうちぇる(タレント)
  • 司会:山本哲也(NHKアナウンサー)

司会:最後は、東日本大震災で被災した宮城県気仙沼市です。若い世代の人口流出が進む気仙沼では、若者たち自身がまちづくりに関わるプロジェクトが進められてきました。今年は集まることができなくなった中、どんな取り組みをしているのでしょうか。

若者たちがつなぐ地域の文化(宮城県気仙沼市)

東日本大震災で壊滅的な被害を受けた宮城県気仙沼市です。震災を機に、若い世代が街を離れ、高齢化が加速しました。そこで、市と若者の支援団体などが連携し、新たな企画を始めました。高校生が、地域の課題の解決に取り組むプロジェクトです。地元の高校生が合宿をし、地域の課題を解決するために自分に何ができるか、プランを立てました。
高校生にアドバイスを送るのは、加藤拓馬さんたち支援団体のメンバーです。

加藤さん「次の時代を生き抜く人材をちゃんとこの町からしっかり輩出していく。それは町の底力につながっていくと思います」

高校1年生で参加した、畠山瑛護くん。気仙沼の人口減少を食い止めたいと、あるゲームの制作を思い立ちました。

畠山くん「“気仙沼、こういうところがいいな”と思うところを題材にしたゲーム。“え、じゃあ行きたい”、というのを僕はねらってます。」
スタッフ「あーそれは面白いね」

畠山くんは小学2年生の時に震災を経験しました。自分もいつか、復興の力になりたいと願ってきた畠山君が高校生になって思いついたのが、このゲームでした。

畠山くん「僕だって気仙沼に何か貢献できるんだ、僕の出番だ、と思いましたね」

2か月後、気仙沼の町歩きを楽しめるゲームを試作した畠山くん。気仙沼で観光PRなどに携わる専門家に見てもらうことにしました。

アドバイザー「おーすごい。これ作ったの?マジで?」

まちの観光スポットを訪ね、買い物などを体験できる畠山くんのゲームに、興味を持ってくれました。

「これ、すぐなんかやろうや」「瑛護やったぜ!」「めっちゃ面白いやん、これ。」

しかし今年、宮城県でも新型コロナの感染が拡大。みんなが楽しみにしていた最大のイベント、夏の「気仙沼みなとまつり」も中止になってしまいました。

そこで畠山くん、ふたたび活動を開始しました。祭りを体験できるゲームをつくり、インターネットで配信して、家の中で楽しんでもらおうと考えたのです。

畠山くん「中止になって悲しんでいる市民の方のために何かできないかなと。今やる意味はあるんじゃないかなと」

畠山くんはゲームづくりに先立ち、気仙沼の人たちに、祭りへの思いを聞いて回りました。

こちらの女性は、昔の祭りの様子を教えてくれました。

女性「素朴だけども、ワクワクするような感じ。みんな軒下に軒花(のきばな)というのを紙で作って、刺したんですよね、屋根の下に」

畠山くんは、さまざまな世代の人に楽しんでもらうため、昔の祭りの姿もゲームに盛り込むことにしました。

8月初め、ゲームが完成しました。

「すごい、これ知っている人見たらすごいね、いや分かるよ」
「これグッとくるんじゃないかな、建物とか」

昔あった軒花や、屋台も再現されています。セリフには、町の人たちから聞いた言葉を盛り込みました。昔を懐かしむお年寄りの言葉。気仙沼に久しぶりに帰省した若者の思い。

軒花のことを教えてくれた女性にも、ゲームを見てもらいました。

「思い出すね」「雰囲気出てますね」

新型コロナで中止になった祭りの楽しさを、ひととき味わってもらえたようです。

畠山くん「もっといろんな人に感謝されたり喜んでもらえて、地域への恩返しとしてやっていきたいんですよね、将来」

宮城県気仙沼市では、今年も、高校生による、地域の課題を解決するプロジェクトが進められています。新型コロナの影響で合宿ができなくなり、加藤さんたちは、ビデオ会議を活用しています。

気仙沼の民話を、子ども達と一緒に絵本にしたいと考えた、神谷心々乃さん。神谷さんは、気仙沼に暮らす民話の語り部を訪ねました。

熊谷すん子さんは、地元の民話をまとめた本を用意してくれていました。津波の恐ろしさや、人に優しくまじめに働くことの大切さを伝える民話などがおさめられています。

熊谷さん「民話は次に住む人たちの平安とか、生活のプラスになるように教えている。次の世代に伝えていただきたいと思います」

ふるさとの文化が、若い世代に受け継がれていきます。

司会:畠山くん、ゲーム作りを通してふるさと気仙沼の見方は変わりましたか。

畠山瑛護くん:「気仙沼の魅力とは」というのがキーポイントだったんですけど。それまでは、お魚がおいしいとか、美しい自然景観があるとか、そういうことを思い浮かべてたんですけど、聞き込みをする中で、気仙沼というのは気仙沼に住んでる人がいちばん大きな魅力だと思ったという見方の変化がありました。

りゅうちぇる:大好きな地元のためにとか、すごく素敵だと思います。僕もゲームやってみたい!

司会:加藤さんは、高校生たちがこういう取り組みをすることの意味をどこに感じてらっしゃいますか?

加藤拓馬さん:地域の身近な課題に取り組んでいくということは、これからまさに「ウィズコロナ」の不確定な時代をたくましく生き抜いていくために必要な力が養われていくんだろうなと。それは地域にとっても、非常に頼もしい力になっていくんじゃないかと思っています。

司会:これは今年4月に大学生と大学院生に対して「もし働く場所が自由に選べるなら、どこに住みたいか:と聞いたものです。55%が地方に住みたいと答えました。東京以外の地方都市に住みたい人が30%。東京に住みたい人は15%にとどまっています。

鎌田さん:いやいや驚きですね。だけど今はSNSがどんどん発達してきて、世界とつながれる時代になってきているから、仕事さえあれば地方に行きたい、まさにそういう時代になってきているんじゃないかなと、よくわかりました。

りゅうちぇる:逆に僕は何も驚かないぐらい、東京はコロナがやっぱり大変だとか、これから東京ってどうなるんだろう、みたいな。その延長線上で、地方で自然とともに生きていくということじゃないかと思います。それから今、「森で自給自足でちょっとやってて、地元のみんなも知り合いなんだ」みたいな男の子がモテるんです、みたいな流れもある気がします。

畠山くん:もう時代的に、一極集中することによる(メリットが)、一か所にあんなにたくさん人が集まっていたってあんまり良いことがないと思うんですよね。見渡せば、周りには魅力的な地域がたくさん広がっているわけじゃないですか。いわゆる地方=過疎、都市部=過密っていう問題を解決することにもつながりますし。それぞれがもっと行きたい場所に広がって行けばというふうに思うんですよね。

加藤さん:多様性の時代がやってきているので。一人ひとりの暮らし方とか働き方に寄り添った自己実現をしていく場所というと、これからは、地方。地域からこそ、いい学びが生まれて行くんじゃないかなと信じています。なので、気仙沼のこの取り組みを全国に広げて行く、それがやりがいの一つでもあります。

鎌田さん:何か嬉しいよね。すっごい嬉しくなった。これから地方の時代が来て、地方から新しいうねりが起きてくるね。

りゅうちぇる:人とのつながりがあるって、ものすごく簡単にできそうだけど、実はできていない。それこそコロナもそうなんですけど、予期できないような災害だったりが起きていくときに、そろそろみんなが「しっかりここで手をつないでいようよ」ということに気づかなきゃいけないって、僕ものすごく思うので。地元でのつながりだったら今すぐにできることだとも思うので。そこからまた、どんどんキラキラ輝いた未来ができていくんじゃないかなって思いますね。

鎌田さん:今という時代、その上に新型コロナウイルスに襲われて、僕たちはますます分断を強めてしまった。そういう状況の中で、もう一回「つながり」をキーワードにしながら新しい生き方やまちづくりをしようという、うねりが始まってるんだなあと思いました。

幸せになる大切なポイントがここにあるんだなと思ったのは、誰かのために何かしようとする人たちを今日は取り上げたわけだけども、そうやって困っている人に幸せを与えようとした時に、ゆっくりその後に、自分に幸せが戻ってきて、一人ひとりの幸せが上がっていく。その総和が日本の幸せになっていくんだと思います。
地域の中で上手につながっていけば、新しい形の経済の仕組みを生み出していくこともわかったし、人と人がつながることによって、弱い人を助けて、置いてきぼりにしない社会を僕たちは作れるんだということを、今回は学んだような気がしますね。