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コロナ禍でもつながる地域活動のヒント【第3回】

コロナ禍でもつながる地域活動のヒント【第3回】

2020年12月7日更新

新型コロナウイルスの脅威が続く日本。地域で集まることが難しくなり、うつや虐待、孤独死などが増えるのではないかと心配されています。こうした中で、どのようにしてつながりを作り、地域を元気にしていけばいいのでしょうか。「集まれないけどつながる」をテーマに、コロナ禍でも工夫をしながら続けられている全国の地域づくりの取り組みを見ていきましょう。

(第2回はこちら)

スタジオの様子

ゲスト

  • 鎌田實さん(諏訪中央病院名誉院長)
  • りゅうちぇる(タレント)
  • 司会:山本哲也(NHKアナウンサー)

司会:ここからは災害の被災地を見ていきます。3年前の九州北部豪雨で被災した福岡県朝倉市です。ここでは水害からの復興が進められてきましたが、新型コロナの影響でさらに厳しい状況に立たされています。地域の再生に向かう朝倉の人達の取り組みを見ていきます。

地域で助け合うネットワークの力(福岡県朝倉市

2017年の九州北部豪雨で大きな被害を受けた福岡県朝倉市。災害の後、全国からのボランティアが、若者を中心に、のべ5万人以上集まりました。ボランティアは、住宅などの泥出しや片付けにあたりました。
ボランティアの受け入れ拠点を地域に作り、復旧作業を支えた、望月文さんです。

望月さん「落ち込んでしまっている地域を、やはり外部の方に来ていただいて地域の活性力を上げていくという、そういった関係性が生まれてくることが非常に重要なことだと思います」

もう一人、地域のなりわいの再生を進めてきた人がいました。あさくら観光協会の里川径一さんです。住民と共に、被災した水田でコスモスを育て、その花を加工したドレッシングを開発。道の駅などで販売すると、人気を呼びました。こうした取り組みを重ね、観光客を呼び込んで、朝倉の復興をめざしたいと考えてきました。

里川さん「被災してもこういうことができるよ、とか、こういうふうになっていけるんだっていう、そんなことができればと思ってがんばっているような気がします」

しかし今年は新型コロナの感染拡大で、観光客が激減。朝倉では、特産の梨狩りなど、観光農園が大きな打撃を受けました。

農園主「どうしようもない。できるだけ早く(コロナ感染を)終わりにしたい。皆さん遊びに来ていただけたらありがたいですね」

そして2020年7月初め、再び豪雨が九州を襲います。朝倉では温泉旅館が浸水するなど、市内各地で被害が発生しました。

そんな中、動いたのは、前の水害でもボランティアの受け入れをした、望月さんでした。コロナの影響でボランティアを全国から集められない今、声をかけたのは、朝倉市など近隣の人達でした。多くの人が自転車で駆けつけます。

望月さんはSNSを使って、地元の知り合いに呼びかけました。口コミで情報が広がって希望者は増え続け、今では200人以上とつながっています。地元にネットワークを築くことで、全国からのボランティアに頼らなくても、災害に対応できる態勢を整えようとしています。

ボランティア「自分たちのコミュニティ、そのエリアで、自分たちでできること、被災したあとに自分たちで復旧していくことも重要なんだろうなと思います」

望月さん「今回のコロナのことでぐっと関係性が近くなった。近隣の方にお願いできるようになったことは、地域の宝が出来たのではないかなと思っています」

観光協会の里川さんも動き出しました。この日やってきたのは、新型コロナの影響でお客が激減した観光農園です。やはりお客が減ったタクシー会社の社長と観光農園の経営者を、里川さんが引き合わせました。観光農園で余っていた梨をタクシー会社が買い取り、福岡市内で売ることになりました。

タクシー会社社長「厳しい商売同士が助けあって先々つなげていけたらいい」

タクシーに梨を積みこんで、一路、福岡市へ。町中に設けた直売コーナーに梨を並べます。販売を手伝うのは、タクシー会社の事務員。かぶりものは手作りです。

500個ほどの梨が、2時間で完売しました。

買い物客「本当は梨狩りに行きたかったんですけど、今こんな状態なんで。応援したいですね」

さらに、観光客が減った温泉旅館と、タクシー会社もマッチング。タクシーが連れてきたのは福岡市からの観光客。自宅の玄関から旅館の玄関まで直接送り届けます。タクシー代は通常のおよそ半額。宿代もGO TOトラベルで35%引きになります。

観光客「家まで玄関まで迎えに来てくれて極楽。何にも(感染の)心配なくて安心」

宿の女将「どこもサービス業界厳しいんですけども、できることを協力して、少しずつ切り開いていくことが必要なのかなと思ってます」

里川さん「タクシー会社もマイナス状態で、温泉さんもマイナス。マイナス×マイナス=プラスじゃみたいな。やれることやって、ご縁つないで、なんとか生き残りつつ、「前より良うなったやんワハハ」みたいになるといいなと思ってます」

りゅうちぇる:とっても素敵だなと思ったんですけど。マイナスとマイナスでプラスになるって絶対あると思うし。この大変な時を、みんなでしっかり手を重ねて強い絆になって、いろんなことに挑戦できたりするんじゃないかなって思いました。

鎌田さん:水害にも負けずに、コロナにも負けずに、前よりもっといい地方を作っていく。その土台作りみたいなのができて来てるんじゃないかなと思いますよね。近所の町の人たちが集まるようなネットワークができていくことは、災害に強い町を作って行くことにもつながるんじゃないか。それから同時に、近くの地域とつながることによってCO2も(減らせる)。遠くから飛行機で飛んでくるよりも環境を守ることにもなりますよね。

司会さん:経済のつながり方もやっぱり違いますよね。

鎌田さん:里川さんがタクシー会社と旅館をつなげていくことで、地域の周りの人たちが「お互いさまだね」と言ってお金を使いあって、お金を回転していくことによって、それぞれが元気になっていく。そういう意味では世界的な資本に利益を持って行かれちゃうんじゃなくて、もっと地域を大事にして、経済、お金を循環させていく。ウィズコロナの時代の新しい経済の成り立ちを示しているように思いますね。

(第4回に続く)