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あなたも「買い物困難者」に!? 地域で見つける解決策

あなたも「買い物困難者」に!? 地域で見つける解決策

2018年12月17日更新

毎日の食事や生活用品のため、お店で買い物をしない日は少ないでしょう。しかし、そのお店に行けなくなってしまったら? お店そのものがなくなってしまったら? どうやって生活していけばいいのでしょうか。
実は、日々の買い物が困難な人たちは、日本全国で700万人に上り、今後も増えていくと予想されています(経済産業省の調査による)。
主な原因の1つは高齢化です。年をとると、これまでのように10分20分の道を歩いてお店に行き、重い買い物袋を抱えて戻ってくることが難しくなってきます。
それ以上に深刻なのが、地域の商店が消えていること。人口減少にくわえ、駐車場を完備した大規模店に客を奪われ、これまで人々の暮らしをささえてきた商店は、地域から姿を消しつつあるのです。
お年寄りのいのちにも関わる買い物困難者の問題を解決するためには、地域全体でのとりくみが欠かせません。すでにいろんな地域で始まっている試みを見てみましょう。

直売所が支えるお年寄りの暮らし

愛知県今治市の島では、お年寄りの買い物難は特に深刻。その解決に、直売所が大きな役割を果たしています。農家からの出荷物を集めるトラックが、帰りの便で、お年寄りの家に注文の品を配達。注文用のタブレットは、安否確認の手段にもなっています。

島の暮らしを支える直売所

今治市の直売所は、地元産の野菜や畜産物、魚介類を販売するだけでなく、交通の便が悪い島の生活を支える役割を担っています。トラックが毎朝集荷に回ることで、島の農家も少ない負担で出荷ができるようになりました。さらに、島の高齢者に簡単に操作できるタブレットを配り、インターネットで注文してもらった商品を、出荷物を集めた帰りの便で届ける仕組みも始めました。買い物困難者の支援と安否確認の両方に役立てています。

TVシンポジウム
これからの農産物直売所~地域の再生にどう結びつけるか~
(2015年2月28日放送)

産直市で買い物難を解消

たとえ市街地に住んでいても、突然、買い物難になってしまうことがあります。スーパーやデパートが撤退し、生鮮食料品が買えなくなってしまった三重県伊勢市の商店街。週1回、産直市を開くことで、困っているお年寄りに対応しています。

撤退した大型デパートの店先で生鮮食品の産直市

三重県伊勢市では、撤退した大型デパートの空き店舗の店先を利用して、週1回、産直市が行われています。デパート撤退後、商店街に生鮮食料品を販売する店がなかったことから、商店街の理事長が農協や漁協などに掛け合って始めました。空き店舗の家賃は無料。地元商業高校の生徒も体験学習の一環として、お年寄りのニーズを聞き取り、お年寄り用の衣料品や、プリン、ヨーグルト、鉢植えなどの仕入れから販売までを行っています。

難問解決!ご近所の底力
大型スーパー撤退 買い物大作戦
(2005年11月10日放送)

地域の足を維持する

お年寄りにとって、路線バスは買い物や通院に不可欠な生活の足。しかし人口減により、路線を維持できないケースが増えています。バスが廃止されてしまった三重県四日市市では、住民たちがバスを買い取り、地域のスーパーや病院、行政とも交渉して資金を集め、自力で路線を復活することに成功しました。

住民が運行するバスで生活の足を守る

三重県四日市市では、唯一の路線バスが廃止となったことを受け、住民たちが生活バス「よっかいち」の運行を始めました。バス会社からバスを買い上げ、その資金を路線沿いのスーパーや病院、福祉施設、市から助成してもらうことに成功。バスを利用する住民から聞き取ったニーズを反映した新ルートをつくり、住民から大人気のバスとなりました。住民の住民による住民のためのバスのおかげで、住民たちの生活の足が守られています。

難問解決!ご近所の底力
生活の足 バスが欲しい
(2003年10月30日放送)

一方、愛知県豊田市や大分県緒方町が採用した工夫とは、自動車学校や病院の送迎バスや、学校のスクールバスを、地域のお年寄りなども使えるようにしたこと。世代間の交流も生まれています。

既存のバスを活かしてお年寄りの移動支援

愛知県豊田市では、市内に2校ある自動車学校の送迎バスに65歳以上の高齢者と体の不自由な方が無料で乗車することができるサービスがあります。大分県緒方町でも、病院の患者送迎バスと2台のスクールバスに一般の人も乗車できるようになりました。市内でバス路線が増えることで、お年寄りたちの交通の便が良くなることに加え、既存のバスに相乗りすることで、世代間の交流にもつながっています。

難問解決!ご近所の底力
生活の足 バスが欲しい
(2003年10月30日放送)

お店がないなら、みんなで作る!

採算がとれない地域に企業がお店を出さないのなら、住民たちの手で作り、自分たちで運営する。これが共同売店です。沖縄の国頭村奥集落では、共同売店が100年以上にわたって相互扶助の中心になってきました。その精神を受け継ぎ、宮城県丸森町大張地区でも、共同売店が遠方のお年寄りを訪ねて訪問販売するなど、暮らしを支える場所になっています。

地域課題を住民の力で解決する共同店

宮城県丸森町大張地区には、13年前に住民たちの出資でつくった共同店「なんでもや」があります。食料品や雑貨を店舗で販売するほか、お年寄りの見守りも兼ねた移動販売も行います。自家製の野菜や豆腐を店に出すことは、お年寄りの生きがいです。丸森町が参考にしたのは、沖縄県国頭村奥集落で110年にわたって住民の暮らしを支え続けてきた共同店。地域課題を住民自身で解決する精神は、丸森町にも受け継がれています。

明日へ つなげよう 復興サポート
放射能汚染からのふるさと再生 ~福島・南相馬市 Part3~
(2016年4月24日放送)

おわりに

宮城県丸森町大張地区の住民の一人は、たとえ共同店の商品がスーパーより高くても、「30円50円安くたって、心は買えない」と話しています。商店とは単にモノの売り買いをする場所ではなく、住民たちが会話を楽しみ、互いに助け合う拠点でもあることが、ここからよくわかります。お年寄りの足となる交通手段を維持し、小さい商店を大事にすることは、地域全体が元気を取りもどす最初の一歩になるかもしれません。