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「ひきこもり」の人たちが社会に参加するには

「ひきこもり」の人たちが社会に参加するには

2018年11月28日更新

厚生労働省によれば、「ひきこもり」とは、仕事や学校に行かず、かつ、家族以外の人とほとんど交流がなく、半年以上自宅に閉じこもっている状態とされます。(厚生労働省:政策レポート(ひきこもり施策について)※NHKのサイトを離れます。
「ひきこもり」は長い間、子どもや若者たちの問題と考えられてきましたが、近年は40代50代にも多く見られ、高齢化が指摘されています。
原因は様々ですが、中高生の時のいじめ、受験の失敗などによる不登校が引きこもりにつながっていくケース。社会に出てからは、突然のリストラや病気などからひきこもりになっていくケースが多く見られます。いずれの場合も、何らかのきっかけがあって規定のレールから外れ、所属できる居場所を失い、その後新たな居場所を探すことができずに、ひきこもっていきます。
家庭の中では、多くの場合、親子関係に深刻な亀裂が生まれ、会話が途絶え、親は「自分の育て方が悪かった」と、自分を責め続けています。当事者やその家族の多くが、社会から孤立したまま、誰にも相談できずに苦しんでいるという現実があります。
こうした人たちには、これまで「怠けもの」「甘えている」といった誤解や偏見の目が向けられがちでしたが、様々な支援の現場から聞こえてくるのは、「チャンスがあれば社会に参加したい、働きたい」という当事者本人の切実な声です。
家族の秘密として隠されていることが多い「ひきこもり」の人々は、近隣住民からも見えにくく、支援の手をさしのべることが難しい存在です。しかし、地域の中に多様な居場所や就労機会を創出していくことができれば、学校や会社で傷つき疲れてしまった人たちが、ふたたび社会と関わって動き出す自信と力をとりもどすうえで、地域コミュニティが大きな役割を果たすことができるのです。
それでは、さまざまな地域における取り組みをみていきましょう。

SOSを出せない人たちを多職種連携で支援

佐賀県佐賀市で活動する子ども・若者支援に取り組む、谷口仁史さん。谷口さんが運営するNPOでは、役所や学校、企業などの関係者と連携して、SOSが出せない子どもたちやその家族に積極的に支援の手をさしのべています。

子ども・若者訪問支援~佐賀県佐賀市~

ひきこもり、家庭内暴力、不登校など、悩む子供や若者への支援活動を行う佐賀のNPOスチューデント・サポート・フェイスの代表・谷口仁史さん。若者たちは社会や家族からも孤立し、SOSを出せずにいます。谷口さんのNPOでは関係機関と連携し、さまざまな制度も活用。相談窓口で待つのではなく、自ら積極的にアプローチし、若者たちに寄り添いながら、社会への復帰や立ち直りを支えます。

プロフェッショナル 仕事の流儀
寄り添うのは、傷だらけの希望 子ども・若者訪問支援 谷口仁史
(2015年8月31日放送)

谷口さんのアドバイスを受けて、長崎県福江島でも、多職種連携により、地域ぐるみでひきこもりの若者を支援する活動が動き出しました。その変化を追う3本シリーズです。

ひきこもりの若者を救いたい【1/3】福江島の現状~長崎県福江島~

長崎・五島列島の福江島では、若者6300人のうち400人が仕事に就いておらず、ひきこもっている人も少なくありません。地域の民生委員や、若者サポートステーションのスタッフ、高校の先生たちも、それぞれに若者たちの支援に取り組んでいますが、声を上げられない若者たちや家族とつながるのは容易ではありません。ひきこもり支援のスペシャリスト、谷口仁史さんは、地域のさまざまな団体や企業がつながる、多職種連携を提案しました。【3本シリーズの1本目です】

ふるさとグングン!
ひきこもりの若者を救いたい 長崎県五島市福江島
(2017年11月19日放送)

ひきこもり支援のスペシャリスト、谷口仁史さんが佐賀で運営しているNPOでは、役所や学校、企業などとの多職種連携で、若者たちの支援を行っています。県内の団体からの情報を集約して、臨床心理士や社会福祉士などの専門職や、200人を超えるボランティアが対応。その人が好きなものを糸口に信頼関係を築いて支援のプログラムを作り、家族の支援にも取り組みます。170以上の事業所も「職親」として若者たちの就労を支援しています。【3本シリーズの2本目です】

ふるさとグングン!
ひきこもりの若者を救いたい 長崎県五島市福江島
(2017年11月19日放送)

谷口仁史さんが佐賀で行っている、ひきこもりの若者支援活動を視察した、五島列島福江島の人たち。谷口さんのアドバイスを受けて、多職種連携に動き出しました。不登校の子どもたちを積極的に受け入れようとしている高校では、県の子ども若者総合支援センターと連携して、欠席が続いている生徒を、家庭ごと支援できる体制を作ろうとしています。若者サポートステーションでも、地域の商店と連携した職場体験が始まりました。【3本シリーズの3本目です】

ふるさとグングン!
ひきこもりの若者を救いたい 長崎県五島市福江島
(2017年11月19日放送)

段階を踏みながら若者たちの就労を支援

元ひきこもりや登校拒否の若者たちの就労を支援している神奈川県横浜市の団体。生活のリズムを身につけることから、社会に出ていく準備を進めます。さらに地域の人々とも協力しながら仕事の場を作り出し、職業体験から始めて、ゆっくりと就職までを支援しています。

職業体験の場づくりで元ひきこもりの若者を支援~神奈川県横浜市~

長引く不況で、若者の厳しい雇用状況が続いています。ひきこもりやニートの若者たちの就労を支援する団体「K2」は、お好み焼店など、職業体験の場づくりを進めてきました。寮で共同生活をしながら生活スキルを身につけ、自分のペースにあった職業体験を積むことで、就労につなげるのが狙いです。さらに地域の飲食店や農家の協力を得て格安の食事を出す「にこまる食堂」を通して、若者支援の輪を地域に広げています。

福祉ネットワーク
シリーズ 地域からの提言(4)「若者と社会を結ぶ」
(2010年6月8日放送)

地域社会の中に活躍できる場を作りだす

秋田県の藤里町社会福祉協議会の菊池まゆみさんは、全国の自治体で初めて全戸訪問調査による「ひきこもり」の村内実態調査を行い、その多さに驚きます。なんとか外に出てきてもらおうと試行錯誤していた菊池さんに衝撃をあたえたのは、「働きたい、社会の役に立ちたい」という若者たちの希望でした。元ひきこもりの若者たちは、今、地域づくりの中心を担っています。

町おこしを担うひきこもり~秋田県藤里町~

実態を掴むことが難しいとされるひきこもりの問題。秋田県藤里町では、社会福祉協議会が全戸調査を実施。人口3600人の町で100人以上がひきこもっていることが分かりました。そこで町では、多種多様な働く場を用意。草取りや雪かきなど小さな仕事を始め、そば店などの従業員、社会福祉協議会の職員や町の特産品作りを担う人材まで現れました。働き始めた80人以上の元ひきこもりは、今、町おこしの希望の星となっています。

ふるさとの希望を旅する
地域再生のヒントを求めて
(2015年10月12日放送)

地域の課題を発見し解決する住民たちのネットワーク

住民同士が見守り助け合いながら、地域課題を発見するネットワークを作ってきた、大阪府豊中市の社会福祉協議会の勝部麗子さん。その中で浮かび上がってきた問題のひとつが「ひきこもり」でした。
住民の力や既存の制度だけでは対応が難しくても、地域の中で課題を共有し住民と共に解決策を考えることで、地域の中に居場所をつくることができています。

地域の絆で、“無縁”を包む  コミュニティソーシャルワーカー・勝部麗子~大阪府豊中市~

孤独死、ごみ屋敷、ひきこもり…地域の声なきSOSを住民の協力を得てキャッチし、解決を図るコミュニティソーシャルワーカー。その第一人者である大阪府豊中市社会福祉協議会の勝部麗子さんは、つねに相手を尊重し、信じ、寄り添いながら、その周囲にいる住民や行政、専門職などをつないで解決方法を探ります。地域に支えあいのしくみをつくり、誰もが生き生きと暮らせる社会をめざす地域福祉の先駆的取り組みを取材しました。

プロフェッショナル 仕事の流儀
地域の絆で、“無縁”を包む  コミュニティソーシャルワーカー・勝部麗子
(2014年7月7日放送)

「ひきこもり」問題を例に、地域の課題を解決する大阪府豊中市の取り組みを紹介します。豊中市社会福祉協議会の勝部麗子さんたちは、阪神・淡路大震災の後、復興公営住宅などでの孤独死を防ぐため、見守り活動を開始。被災者だけでなく、地域の中に埋もれていたさまざまな課題を発見していきます。従来の福祉制度では対応できない「制度の狭間」にある課題を発見・共有・解決する仕組みをつくりあげてきました。

明日へ 支えあおう 復興サポート
人と人のつながりが命を救う ~大阪府豊中市~
(2015年4月19日放送)

豊中市では、元ひきこもりの人たちが地域の中で多様な人たちとつながりながら活躍できる場も作り出しています。詳しくは、勝部さんのブログ連載もごらんください。