2017年6月23日更新
地域の中にある資源を循環させることで、
豊かで自立した地域を作っていくことができます。
食べものをはじめ、私たちの生活に必要なモノたちは、自然の中で長い時間をかけてできた資源から作られています。
しかし「より多く、より早く、より安く」を目指す経済の中で、自然が再生する間もないほど資源をどんどん消費してしまった結果、今では私たちは、衣食住のほとんどを輸入に頼るようになりました。
もういちど地域の中にある資源に目を向けて、より自然に近い位置で生活と産業を営んでいくことは、外の資源に頼らない自立した地域を作ることでもあります。そこでキーワードになるのが「地域内循環」。文字通り、地域の中にサイクルを生み出して回し続ける(リサイクル)という意味です。
家庭から始まる小さなサイクルから、地域全体を巻き込むダイナミックなサイクルまで。各地で生まれた循環のはたらきを見てみましょう。
まずは畑と台所から
小さなリサイクルの輪は家の台所から。お金をかけて生ごみを処理するのでなく、堆肥にして畑に戻すと、安心で美味しい有機野菜になって、台所に帰ってきてくれます。
市民と農家でつくる生ごみ堆肥の地域内循環
長井市は生ごみリサイクルの世界的な先進地。市内5000世帯から出される生ごみから堆肥を作り、その堆肥で市内の農家が野菜を生産、それを市民が食べるという循環型の仕組みです。この地域づくりモデルは、市民と農家の懸け橋となっていることから、「レインボープラン」と呼ばれています。生産された安心安全な野菜は、市内5ヶ所の直売所で販売。流通業者を挟まないため、農家は高く、市民は安く売買ができています。
NHKスペシャル
ふるさとからのメッセージ
(2007年1月1日放送)
畑とつながる学校は楽しい
家庭と畑のサイクルができるなら、もちろん学校と畑のサイクルも。勉強と給食がつながり、子どもたちも楽しそうです。
子どもたちがたい肥を作り育てた「のらぼう菜」給食
東京都檜原村の春を告げるのは、江戸時代から作られている「のらぼう菜」。“野良にボウボウ生える”ことから、このような名前がついたと言われる、アブラナに似た野菜です。地元の小学校では、学校の畑で、のらぼう菜を育てて環境教育の教材にしています。給食で出る生ごみを焼却せず、たい肥にすることで、CO2を削減し地球温暖化を防ぐ方法を学びます。自分たちの手でたい肥を作り育ててきた「のらぼう菜」給食の味は格別です。
食べてニッコリ ふるさと給食
のらぼう菜給食 ~東京・檜原村~
(2011年6月22日放送)
食のサイクルにエネルギーも
埼玉県小川町では、家庭と農家をつないで回る食べもののサイクルに、さらにエネルギーのサイクルも加わりました。台所からの廃油が、農家でトラクターの燃料に。商店や企業も加わって、環境と調和し、自立した地域が生まれています。
食とエネルギーを地域で自給・循環
埼玉県小川町では1人の有機栽培農家から広がった地域自給が注目を集めています。農家は野菜の定期販売先から出た野菜くずを集めて堆肥に利用。地元の商店や企業も高価格で農産物を購入して農家を支えています。また、地域から集めた調理済油を精製してトラクターの燃料に。生産者と消費者とが結びつきながら食料とエネルギーを循環する地域社会の在り方を求め、熊本県阿蘇地方でも移住者を中心に同様の取り組みが始まっています。
クローズアップ現代
“自給力”~食とエネルギーを自給する暮らしの可能性~
(2011年10月17日放送)
森林・エネルギー・人のサイクル
地域に眠る資源の中でも、最も活用されていないのが森林です。安い輸入木材に押されて、せっかく育った木が利用されず、荒れ果てた森林が各地で増えています。そんな中で、森林を生かして地域にダイナミックな循環を生み出しているのが、高知県の梼原村。風力発電で生まれた資金で森林を整備。活性化した林業はさらにエネルギーを生み、農業にも活用されています。エネルギーの地域自給100%を目指して動き出した地域には、若い人たちが働く場も生まれています。
林業を利用した再生可能エネルギーで地域を元気に
過疎に悩む高知県梼原町では、風力発電による再生可能エネルギーをきっかけに地域が再生しています。風力発電の売電収益によって森林を整備。林業が活気を取り戻したほか、間伐材を乾燥、圧縮してつくる木質ペレットを利用した発電にも着手。町内の公共施設やビニールハウスの暖房などに利用しています。町役場に太陽パネルを設置したり、水力発電を街灯に利用したりするなど、電力自給率100%を目指した取り組みが広がっています。
TVシンポジウム
農山村と再生可能エネルギー~地域をどう活性化させるか~
(2014年3月8日放送)
地域の環境は、快適で健康な暮らしのためにも大切ですが、ただ保護する対象でもありません。資源として守りながら活用することで、地域の中のさまざまな資源や人を結びつけ、ゆっくりとでも豊かで大きなサイクルを生み出していくことができるんですね。
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