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2022年06月01日 (水)

番組担当プロデューサー・取材見てある記vol.1 獣害 転じて福となす【2】島根県美郷町の地域づくり

さて、1年後の2019年6月放送の「ふるさとグングン」では、島根県美郷町役場の獣害担当、安田亮さんと、獣害研究家・雅ねえが、一緒に三重県津市美里町を再訪しています。担当は、吉永亮二ディレクターでした。NHK地域づくりアーカイブスで、この番組から3つの動画を見ることができます。
1年後の美里町に大きな変化が
1年後の美里町――驚いたことに、獣害はほとんど無くなっていました。住民たちが、力を合わせて、動物の“潜み場”と“エサ場”を無くしていたのです。そうした1年の活動の中で、足坂集落のコミュニティーの再生も進んでいました。地域の集会所に、女性たちのグループが週2回開くカフェが誕生していました。みんなで共同農園を作ろうという動きも始まって、最近人気の高いエゴマを植える計画も進んでいたのです。最初の動画、 「獣害対策1年間の成果は?」には、そうした1年の成果が描かれています。

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地域の集会所でカフェを開いた女性グループ

 一方で、問題も起きていました。足坂集落の獣害は収まりましたが、周りの集落の獣害は、激化していたのです。獣害対策は、一つの集落でやれば良いというものではなく、広域での対応が必要になってくるわけです。二つ目の動画「1つの集落では問題は解決しない」は、こうした課題を描いています。

再び、島根県美郷町を訪ねると、新たなヒントが

 そこで、3番目の動画「垣根を越えたつながりが地域をつくる」では、周辺の集落の代表も一緒になって津市美里町の人々が、再び島根県美郷町に視察に向かいます。

一年ぶりに津市の人々が、島根の野菜の直売所「青空サロン市場」を訪ねると、大歓迎を受けました。そして視察団は、この青空サロン市場が、実は、4つの集落によって共同運営されていることを知ります。青空サロン市場では、野菜が売り切れたあと、みんなで食材を持ち寄って朝食会を開くのですが、その食材の準備も、4つの集落が順番に担当していました。こうした集落の垣根を越えた人と人との交流やつながりが、獣害対策にも生かされていたのです。視察団はさらに、それぞれの特技を大切にすること、何でもざっくばらんに話すことなど、集落を越えた交流をする際の秘けつを学びました。

 視察から帰った三重県津市美里町の人たちは、集落を越えた交流を始めようと、周辺の集落にも声をかけ、閉校になった小学校のランチルームを利用して、朝食会を開きます。会場には、予想を超えたたくさんの住民が集まってくれました。三重県津市の足坂集落で始まった獣害対策は、地域全体へと広がろうとしていました。

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閉校になった小学校のランチルームで開かれた朝食会

福島・南相馬市小高区からのSOSに 雅ねえが出動!

島根県美郷町の獣害対策を2回に渡って放送したあとの2019年秋、今度は、福島県南相馬市の小高区からSOSが届きました。原発事故のあと、5年間避難生活を強いられた小高区の人たち。避難指示が解除され、久し振りにふるさとに帰ってみると、そこは野生動物の楽園になっていたといいます。激しい獣害を、何とかしてほしいという声が、倉田園子ディレクターの元に届きました。

2020年1月に放送された「ふるさとグングン」では、島根県美郷町に暮らしている獣害研究家、雅ねえ(本名 井上雅央さん)に南相馬市へ向かっていただきました。NHK地域づくりアーカイブスには、この番組の動画も収められています。

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畑を襲うサルの群れ

 1本目の動画「知らずにエサ場を作っていた?」は、南相馬市小高区の激しい獣害被害の様子を描いています。南相馬市役所も、懸命に手を打ってきましたが、やはり有効な手立てを探しあぐねていました。そこに、雅ねえが獣害研究家として訪ねてきます。雅ねえは、住民が集まっている場で「獣害の原因は人間である。動物が悪いのではない」という基本的な考え方を話したあと、野外に出て、被害の実態を見て回りアドバイスを始めます。そして雅ねえは言います。

「この地域には、田んぼを大事にしたい、荒らしたくないという強い思いがある。そういうところは、獣害は100%止まる。被害はあるけど、明るい材料もいっぱい」。

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田んぼで被害実態を見る雅ねえ

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田んぼを荒らすイノシシ

獣害対策、コツは無理せず楽しんで

次の動画「獣害対策、コツは無理せず楽しんで」|では、福島県南相馬市小高区の人々が、島根県美郷町を視察に訪れます。「青空サロン市場」「青空サロン畑」「クラフト作り」いつものコースに加えて、視察団が訪れたのは、山間の集落で小さな畑を守ってきた、高齢の夫婦でした。山根治正さん(83)と妻の末子さん(77)。

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農家の山根治正さん 

 2人は今、150坪の畑に様々な野菜を育て、庭に果樹を植えて、収穫物は直売所に出して暮らしています。実は、2人の段々畑の面積は、年齢と共に、少しづつ狭くなってきています。身の丈に合った広さの畑に電気柵を張り、雅ねえと一緒に獣害対策を学びながら暮らしてきました。雅ねえは、福島でも、全ての田畑を守る必要は無い。自分が耕そうと思う畑の広さだけを守る。身の丈が大事。無理をせず、楽しんでいこうと呼びかけます。

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雅ねえの家で開かれた宴

夜、視察団は、雅ねえの家に招かれました。通されたのは、壁にウィスキーがズラッと並べられているバーのような部屋。真ん中に大きな長テーブルがあり、雅ねえが作ったもてなしの手料理や、地元美郷町の女性リーダー、安田兼子さんが持ち込んだごちそうなどがたくさん並んでいます。お酒を飲むうち、福島県南相馬市小高区の人たちは、ふるさとを突然追われた原発事故の体験を語り始めました。

島根県美郷町の人たちは、本音をざっくばらんに話し合うことが、地域づくりでは大切だと、考えてきました。宴の最後に、雅ねえが福島の人たちに語りかけました。「出来そうなことからやってみたら、必ず何か見えてくると思う。諦めずに、頑張ってください」。

ひとまず自分たちでやってみよう! その気持ちが大事

3つめの動画「獣害対策の第一歩は協力から」には、視察を終えて、福島県南相馬市小高区に帰ってきた女性たちの4人グループが、早速動き出す様子が収められています。女性たちは、自分たちで、視察で学んだサルよけの柵を作ることにしました。これまでは、バラバラに1人で獣害と闘ってきた女性たち。みんなで力を合わせるのは、初めての経験でした。

作業をしていると、雅ねえがわざわざ様子を見に来てくれました。柵の出来は不十分で、改良が必要なことが分かりましたが、雅ねえは、「これは、第一歩じゃん。出来映えはともかくとして、自分たちでやってみよう!という気持ち、これが一番大事!」と、うれしそうに女性たちを励ましていました。

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 女性たちの作った柵を見に来た雅ねえ

 2022年6月11日には、NHKスペシャル「獣害を転じて福となす~雅ねえと中国山地の物語~」が放映されます。今回の番組で、雅ねえが訪ねたのは、やはり獣害に苦しむ岡山県美咲町です。そこではどんなことが起きたのか。そして、前回の「ふるさとグングン!」の放送から2年余り。獣害対策先進地・島根県美郷町は、どんな進化を遂げているのか。この番組の一部も、地域づくりアーカイブスでご紹介したいと思っています。

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