全国ハザードマップ

【第4回】発災時 データで命は守れるか ~自治体編~

2023/1/11

6.発災時 膨大な情報を的確に選別できるか

 

221230_6_wm_1920x1080

畑山(京都大学):どうもありがとうございます。私も色々と研究をさせてもらっていますが、令和2年7月豪雨はコロナのこともあってですね、現地に行けなくて、こういった情報を得られなかったので、大変貴重なお話を聞かせていただいてありがとうございました。

 やはりこれからの話の方が重要かなというふうに思いましたが、消防・警察との連携の重要性を強調されていたと思います。消防・警察、自衛隊も含めて、そもそも危機管理を本業としている方たち、それから県の方、あるいは市町村の方のように、普段は危機管理ではなく、定常的な業務をしっかりやる人たちの間で、情報の見方の違いがあるのではないか。私は、災害時は使えるものはなんでも使った方がいいんじゃないかと思う方ですが、一方で行政の方に聞くと、「不確定な情報がいっぱい入っても使いようがない」という話を聞きます。消防や警察の人に聞くと、「我々は元からそういった情報を扱っているから、あるものはみんな欲しい」と言われます。消防や警察は、情報の信頼性を見極めながら情報を見ることを平時からされていると思うんですが、県の危機管理防災課など、割と情報判断に長けた方が最近はおられるので、対応できる可能性はあるのではとも思います。市町村の職員の方ですと情報の取捨選択をしきれない可能性はあるのではないかと。訓練の時に、そういった情報を評価したり付与したりするのは県の職員が担うと言っていましたが、一方で他部署からも職員を引っ張ってきて訓練をしているという話でしたので、お聞きする感じでは人材不足の面もあるのではないか。不確実な情報をうまく使う能力が、警察や消防の方と、行政の方ではギャップがある気がしますが何か工夫されている点、あるいは「県ではうまく情報の取捨選択ができている」なのか、現状を伺えますか。

 

221230_7_wm_1920x1080

三家本(熊本県危機管理防災課):県は1年の間に7回訓練を行います。市町村は年に1回ですが、市町村には、多いところで30個、少なくとも20個ほどの被害情報を作りまして、その中には2つの情報を組み合わせないと現状がはっきりとわからないものも仕込んでいます。あるいは住民の方の情報ということで、少し誤った情報を伝え、警察が後から正しい情報を送るという仕込みもしています。訓練毎に内容を毎回変えていますが、このようなトレーニングをしていまして、正しい情報を選定する能力を磨きます。それから、中には「どうでもいい情報」と、「県に上げるべき情報」を色分けして出すんですが、訓練が終わった後に結果を見ながらですね、「それは県に上げるべき情報ですよ」「これは違いますよ」と、必ず各市町村に派遣された評価員と共に振り返りを行っています。県は年に7回の訓練がありまして、1回あたり7市町村ほど参加しますので、200~300の情報が各所から伝えられますが、これを処理する能力を磨きます。当然、最初からはうまくできませんが、年に7回くらい訓練すると、かなり習熟されます。特に人命救助が大事ですので、人の命に関わる情報をしっかり選別するということを重視して訓練を実施するとともに、命に関わらない情報についてはシステムに入力して、データとして蓄積します。訓練を3年繰り返し、4月に人が入れ替わりますので、1年目、2年目の職員を1~3月に徹底的に鍛えまして、4月から5月の訓練で、災害対策本部室のチームとしての能力を徹底的に鍛えます。訓練は3時間行いますが、終了後に1時間半ほど、種明かし、つまり回答用紙を見せながらですね、「これは間違ってるぞ」「これは良かった」という話を全部チェックしまして、それをもとに次の訓練を実施する。すると、最低限の能力はつきます。ただ毎年人事異動で人が替わりますので、訓練を繰り返していかないといけない。なかなか警察や自衛隊のように完全に情報を判断する能力まではいきませんが、訓練に注力することで最低限の力がついてくると思います。

 

三家本(熊本県危機管理防災課):もう1つ力を入れているのが、警察・消防・自衛隊の方々などとの合同訓練です。この訓練については県庁のみならず、各市町村も参加し、対策本部に警察・消防・自衛隊・海上保安庁からも、LO(連絡要員)に来ていただきまして、彼らに情報を提供しながら色々話し合っていくと。「この情報は大事なんですよ」というのを言いながら、市町村の職員と話し合いながらですね、一緒に考えていくというのをやっています。消防・警察の方は、1名は「コントローラー」として状況付与、被害情報をそれぞれ「110、119番の情報ですよ」と伝えながら、それを伝えた後に「これはこうしたらいいんじゃないですか」ということを協議しながらやっていきます。県にも同じく、県警・自衛隊の司令部や、消防本部の上層部の方が来ます。危機管理官や課長級の方々と話し合いながらですね、上がってきた情報についてそれぞれ精査をして、優先順位、どこから助けていくかといったようなことを協議するようにしております。

 この2つの手段で、行政職員の弱いところについて、訓練を繰り返し、様々な機関の助言を得ながら、ある程度補完していく。これを梅雨時期までに終わらせて、実際の豪雨時までには、最低限の知識と技術を身につけるようにしています。

 

221230_8_wm_1920x1080

畑山(京都大学):ありがとうございます。大変重要な話ですし、他の自治体でも進めていただきたい取り組みだと思いました。

 

7.臨機応変な対応へ 部署横断でできることは 

 

221230_9_wm_1920x1080

関本(東京大学):もちろん、情報による現場支援が最優先なことは間違いないと思っていて、防災系の部署の方はおそらく1年通じてその準備や訓練を繰り返していると思いますが、逆に情報政策系の部署の方が支援する、そういった役目はなくてよいのか。実際の災害が起きた時には支援するとか、そういう仕組みがあってもいいのではと思いますが、そのあたりはいかがでしょうか。

 

221230_10_wm_1920x1080

三家本(熊本県危機管理防災課):今、ハード面の支援は色々いただいています。特に通信、無線、システムの保守については定期的に各所から訓練に参加してもらっていますが、なかなかソフト面については今、県には総合防災情報システムが入っていますが、これをさらに他のシステムと連接するなど試みています。ですが、元々のシステムとの相違や、予算の関係で進んでいない点もあります。今、県も、システム情報の部署が立ち上がりましたので、外から入ってくる情報、あるいはリアルタイムデータの活用なども今後入れていきたいなと考えていますが、現在色々検討中です。

 

221230_11_wm_1920x1080

関本(東京大学):ありがとうございます。もう1つ関連してお聞きしたいのが、システムは、災害情報系の、例えばGISなども絡んでいるような、重めのシステムと、もうちょっと軽めのシステムで、例えばSlack・Teamsで、普段から県と市町村がつながって、防災担当のグループなどチャンネルがあると、「とりあえず何かあったらそこのチャンネルで報告したりリンクを貼ったりする」ような、割と軽めなデジタルコミニュケーションのチャンネルを確立させる訓練もあっていいのかなと。

 我々大学でも、大学院入試の時期がありますが、その時ってトラブルが起きるとすぐ対応しないといけないのでその期間だけ、教員チャンネルなどを作って、トラブルがあったらすぐ報告するとか、すぐ対応を指示するなどして、その時に集中してそのチャンネルを見ます。もちろん、得意不得意もあると思いますが、若い人であれば対応できるのではとも思ったりします。そういった切り口はありえますでしょうか。

 

221230_12_wm_1920x1080

三家本(熊本県危機管理防災課):実は今年の11月3日に、県の総合防災訓練で大規模な訓練をしたんですが、これについてはNTTのご支援をいただきまして、「画像による共有システム」ですね、リアルタイムで、とても精度が高いものでした。実際の画面共有を通じてですね、県知事と市町村で話したり、重要な情報については画面を映して報告し、それを後で電話やシステムで確認するといったことをしました。今、いろんな企業の協力をいただきまして、使えるものはぜひ取り入れていきたいというところです。オンラインの会議システムも増えてですね、普段の訓練についても必ず市町村対策本部と県についてはオンラインで繋いで、訓練しながらですね、何かあったら音声でやり取りする。実際に訓練でやっております。

 

221230_13_wm_1920x1080

関本(東京大学):ありがとうございます。確かにオンライン会議が普及しているので、災害の時にも機能しそうだということですね。

 

221230_14_wm_1920x1080

畑山(京都大学):実際、大災害になると、「LINEでやりとりしました」という人がいっぱいいるので、具体的には使われるんですけど、デメリットもあります。普段からグループチャットができていないと、やはり見ていない人が出てくる。県のシステムは「みんな入れましょう」「そこを見ましょう」とコンセンサスが取れている。そういう意味では、そこに入っているのが一番オフィシャルで、それ以外のものは見なくていいっていう安心感はある気がします。そのシステムを使える人が限られますっていう話になってくると、何人かだけでLINEグループなどを作ることはされています。こういったことを事前に訓練に取り入れますというのは難易度が高い気はします。その辺りは県よりも、どちらかというと市町村の方が、「止むに止まれぬ事情でやりました」という話が出てくるのではと思います。

 

221230_15_wm_1920x1080

関本(東京大学):ありがとうございます。恐らくその通りだと思います。もちろん総合防災情報システムが、避難訓練の時にもちゃんと入れ込む対象になって、市町村なども対応できているというのであれば、ある程度問題ないとは思います。

 

 

 

221230_16_wm_1920x1080

三家本(熊本県危機管理防災課):「使えるものはなんでも使ってみよう」というのが実際の災害の対応になりますので、令和2年7月豪雨の時も、LINEなどは使いました。また、今は様々なSNS も使って見るようにはしていますので、使えるものは訓練で使って取り入れていこうという姿勢でやっていますが、なかなか、今の段階で「すぐ取り入れたい」というのが見つかっていないのも現状です。

目 次

1. 令和2年7月豪雨 熊本県が知りたかった情報とは

2. 豪雨時 次々と寸断される情報網

3. 発災後 明らかになった「通信の脆弱性」

4. 連続する“想定外” どう備える?

5. その訓練想定外を想定しているか

6. 発災時 膨大な情報を的確に選別できるか

7. 臨機応変な対応へ 部署横断でできることは

8. 寸断するシステム 何を優先し強靱化すべきか

9. 過去の災害データ 検証用プラットフォームの早期構築を

10. 試みが進む “リアルタイムデータ×避難訓練”

11. 過去の発災時データ 柔軟な共有

HOME
記事一覧
使い方
よくある質問
ハザードマップを見る