テレビ

2020年調査

テレビよりも睡眠や身だしなみ?~10代 朝のテレビ離れ

国民生活時間調査では、以前から若い世代を中心にテレビ離れが進んでいる傾向が見られました。今回の2020年調査では、どのような結果がでたのでしょうか。若者を深掘りする前に、まずは国民全体での1日のテレビ視聴の推移を見てみましょう。

図1 テレビ 30分ごとの平均行為者率 国民全体(平日)
図1 テレビ 30分ごとの平均行為者率 国民全体(平日)図1 テレビ 30分ごとの平均行為者率 国民全体(平日)
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これは2010・2015・2020年の3回分の調査結果をグラフにしたものです。朝・昼・夜の3つの時間帯において2020年が一番低い結果になっているのが分かります。その中でも注目したいのが朝の時間です。

これまで、夜のゴールデンタイムのテレビ離れは早くから指摘されてきていましたが、国民生活時間調査では、朝の時間についてはこれまでは大きな変化はありませんでしたが、今回初めて朝の幅広い時間で減少が見られたのです。堅調と思われていた朝のテレビ視聴が減っているのは、なぜなのでしょうか。朝のテレビ視聴の減少を男女年層ごとに見ていきましょう。

今回の調査では、20代男性と60代女性をのぞく幅広い年層で朝(6:00~9:00)のテレビ視聴が減少しています。そのなかでも、減少が大きかったのは、10代男女と50代女性で、6~7時台前半に減少しました(50代女性ではそれに加えて8時台も顕著に減少)。
今回は、10代男女のテレビ視聴の減少に着目し、その原因がどこにあるのかを考えてみました。

図2 テレビ 15分ごとの行為者率 男性10代(平日)
図2 テレビ 15分ごとの行為者率 男性10代(平日)図2 テレビ 15分ごとの行為者率 男性10代(平日)
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図3 テレビ 15分ごとの行為者率 女性10代(平日)
図3 テレビ 15分ごとの行為者率 女性10代(平日)図3 テレビ 15分ごとの行為者率 女性10代(平日)
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※グラフの目盛の6:00は、6:00~6:15を表す(以下同様)。

2015年調査では、10代男女ともピークである7:00~7:15時点で18~19%の人たちがテレビを視聴していましたが、2020年調査では、同時間帯の視聴が男女ともに大きく減少し、男性で18%→6%、女性19%→12%と減少しました。

この結果から、まずは朝の時間にテレビ以外で増えている行動がないかを探ってみました。「睡眠」「食事」「身のまわりの用事」「通学」「ラジオ」「新聞」など、朝に多い行動をそれぞれ見たところ、その中でも増加していた行動は「睡眠」と「身のまわりの用事」でした。

「睡眠」については、10代女性は6:30~7:00の間に増加しており、これは起床時刻が遅くなったことを表しています。この時間帯は、10代女性でテレビ視聴が大きく減少していた時間と重なるので、10代女性に関しては、朝の時間の「睡眠」の増加と「テレビ」の減少に関係性があると言えます。一方で、10代男性については統計的に有意に「睡眠」が増えているデータは見られませんでした。なお、10代以外で朝のテレビ視聴が減少している層のいくつかでは、10代女性と同様に、朝の「睡眠」が増えている傾向がありました。

図4 男性10代 睡眠とテレビの行為者率の比較(平日)
図4 男性10代 睡眠とテレビの行為者率の比較(平日)図4 男性10代 睡眠とテレビの行為者率の比較(平日)
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図5 女性10代 睡眠とテレビの行為者率の比較(平日)
図5 女性10代 睡眠とテレビの行為者率の比較(平日)図5 女性10代 睡眠とテレビの行為者率の比較(平日)
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次に、「身のまわりの用事」については、10代男性では6:30~6:45と7:15~8:00に増加しており、10代女性でも7:30~7:45に増加していました。この「身のまわりの用事」には、着替え、入浴、お化粧、歯みがきや身支度などが含まれています。テレビを見るよりも身だしなみに時間を割いている可能性が推測できます。

図6 男性10代 身のまわりの用事とテレビの行為者率の比較(平日)
図6 男性10代 身のまわりの用事とテレビの行為者率の比較(平日)図6 男性10代 身のまわりの用事とテレビの行為者率の比較(平日)
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図7 女性10代 身のまわりの用事とテレビの行為者率の比較(平日)
図7 女性10代 身のまわりの用事とテレビの行為者率の比較(平日)図7 女性10代 身のまわりの用事とテレビの行為者率の比較(平日)
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なお、朝のネットやSNS・動画利用がテレビを減少させている可能性も探りましたが、2015年にはほとんど見られなかった朝のインターネット関連の行動は、2020年では10代男性で7%(6:45~7:00)、10代女性で4%(7:30~7:45)という結果でした。数字としては大きくありませんが、男性では同時間帯にテレビを見ている人の割合が5%というところをみると、同じくらいの存在感があると言えそうです。

また、10代はその多くが家族と同居していることもあり、家族(特に親)が朝にテレビを見ているかどうかも関係がある可能性があります。彼らの親を30~40代と仮定すると、前述したように、その層の女性でも朝のテレビ視聴が減っているので、親子ともに朝のテレビ視聴が減っている可能性も少なからずありそうです。

「堅調」と思われた朝の時間の視聴が下がっている結果を目の当たりにし、忙しい朝の限られた時間を人々はどう過ごしているのか、また、テレビ局として、その時間帯にどのようなアプローチが効果的なのか、考えさせられる結果となりました。

(築比地真理 研究員)

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