テレビ
テレビ離れと言われながら、 2000年以降、テレビの視聴時間は3時間半に迫る勢いで高い水準を維持してきました。この長時間視聴は、視聴時間が長い高齢者の割合が増加したことが主な要因です。ところが、2010年から2015年にかけて、3時間28分から3時間18分へと、30年ぶりにテレビの視聴時間が減少しました。
高齢化は続いているにも関わらず、なぜテレビの視聴時間は減ったのでしょうか。過去の事例も参考にしながら、視聴時間減少の理由を探ります。
図1はテレビ視聴時間の推移を1970年から示したものです。このグラフをみると、視聴時間が減ったのは今回が初めてではなく、1980年から85年にかけても減少していたことがわかります。
1980年代は、東京ディズニーランド開園(1983年)に象徴されるようにレジャー産業が活発になり、また1985年に男女雇用機会均等法が制定され、女性の社会進出が進んだ時代です。外でのレジャーや仕事に出る女性の増加によって、これまで昼間に家でよくテレビを見ていた女性の日中の在宅率が大きく減りました。このことがテレビ視聴減少の一因になったと考えられます。
さらに視聴率調査からは、夜間のゴールデンタイムの視聴率も下がっていたことがわかっています。この背景には、マンネリ化などテレビに否定的な印象を持つ人の存在や、視聴スタイルが個人化し、好きな番組を好きな時間に見るようになるなど、テレビの見方の変化がありました。
このように1980年代のテレビ視聴の減少には様々な要因が影響していましたが、2010年から2015年にかけて視聴時間が減った理由は何だったのでしょうか。
まず、どの時間帯でテレビ視聴が減ったのかを確認してみましょう。図2は、 2010年と2015年について、テレビを見ている人の割合を30分ごとにプロットしたグラフです。
21時台・22時台の夜間でテレビを見る人が大きく減っていることがわかります。では、このテレビを見る人が減った時間帯に、どのような行動をする人が増えたのでしょうか。
図3はこの21時台と22時台で、2010年から2015年にかけて増加した行動です。
21時台には、中高年層でインターネット、ビデオ・HDD・DVD、睡眠、身のまわり用事(入浴や歯磨きなど) 、22時台は若中年層で、それらに加えて仕事、炊事・掃除・洗濯などに時間を使う人が増えています。
つまり、2010年から2015年にかけて、高齢者も含めて、特に夜間に、インターネットや録画の利用というメディア利用行動の変化があり、さらにそれだけではなく、仕事・睡眠・家事など他の活動にあてる時間の増加という生活の変化までもが起きていたのです。そのため、夜間にテレビを見る人が減り、テレビの視聴時間の減少を引き起こしたと言えます。
次回2020年の調査では、メディアを取り巻く環境、そして仕事の仕方や家での過ごし方にもいっそうの変化が予想されます。テレビの視聴時間の減少は続くのか、それとも在宅勤務など新しい働き方によって、これまでとは違った視聴スタイルがみられるのか、次の結果にもぜひ注目してみてください。