NHK放送文化研究所

2021年メディア調査

テレビの画面は放送以外でも使われている?

テレビ放送が始まった当初、テレビは放送電波を受信するための機器(デバイス)でした。
ですが、最近はテレビの画面を使って、色々なことができますよね。録画したドラマをみたり、自分の好きなアーティストのDVDを再生したり、ゲームをつないで遊んだり・・・。最近では、テレビをインターネットにつないで動画を見る、という視聴スタイルも広がってきました。

今回の調査では、メディア利用行動を"デバイス別"に分類して、そのデバイスの中でどのような行動をしたのか、分けてみることができます。
たとえば「テレビ画面」という"デバイス"の中で、リアルタイムの放送や録画(タイムシフト)、またDVD、ゲーム、インターネット経由の「動画」を見たのかなど、具体的な行動が分かります。

図1 テレビ画面 項目別の時間量(男女年層別・全員平均時間の積み上げ・月曜)

こちらは、"テレビ画面"の利用行動を積み上げて、男女年層別にみたグラフです。
一番左の全体をみると、リアルタイム放送の視聴時間はやはり長く、1日で2時間54分が費やされています。いっぽう放送を録画してみる「タイムシフト」の視聴時間は1日で20分。DVDは3分、動画が6分、そしてゲームは4分です。
全体の結果だけ見ると、やはりテレビ画面の利用はリアルタイムの放送が圧倒的なようにも見えます。しかし、これを男女年層別に詳しく見ていくと、やや違った側面が見えてきます。
リアルタイムの視聴は男女ともに年齢が上がるほど伸びていき、60代以上では1日に4時間から5時間程度に達します。いっぽう、若年層ではリアルタイムの視聴時間は短く、20代以下では1時間を切り、男性10代や20代では30分前後にとどまります。
そして、この若年層に注目すると、たとえば「動画」は、男性20代で15分、女性20代で19分、女性30代では14分。また「ゲーム」は、男性10代で13分、男性20代では21分でした。男性20代では、リアルタイムの視聴時間が28分なのに対して、それ以外の利用を単純に積み上げた合計は46分となります。
このことから、若年層ではテレビ画面の占めるリアルタイム視聴の割合が相対的に低く、それ以外の形でテレビというデバイスが利用されている様子もうかがえます。

ちなみに、2020年の「 国民生活時間調査」でも、テレビの視聴時間が朝を含めて減少していたという結果が出ていましたが、その時の視聴時間は「リアルタイム」が対象でした。
特に若い人たちにとっては、テレビとはリアルタイムの放送を長時間流すものではなく、むしろ動画やゲームを含めた様々なコンテンツを、大きな画面で楽しむもの、という位置づけなのかも知れません。

ここまで紹介した視聴時間は、テレビ画面のなかでいずれの行動もしていない人も「0分」に含めてカウントした「全員平均時間」の結果でした。
では、今度はその行動をしている人を100%とした「行為者平均時間」でみてみると、どうでしょう。

図2 テレビ画面 項目別の行為者率と行為者平均時間(国民全体・月曜)

こちらでは、テレビ画面の行動別に、行為者率を青の折れ線グラフ、行為者平均時間をオレンジの棒グラフで重ねて示しました。これをみると、「リアルタイム」のテレビ視聴は全体の76%が行っており、行為者平均時間では3時間49分と、長時間視聴されていました。
いっぽう「録画」は19%で、全体では5人に1人しか行っていません。また「動画」や「ゲーム」といった行動はさらに少なく、5%前後にとどまっています。しかし行為者平均時間をみると、いずれの行動も2時間前後は行われていました。利用者数が少ないことに留意する必要はありますが、利用している人に限るとそれなりに長時間、利用されていることもうかがえます。

ちなみに「動画」の行為者率を男女年層別でみると、女性20代では16%が利用するなど、層によっては利用の割合が高い傾向もみられました。
全体の行為者率や全員平均時間でみると、テレビ画面の使い方はまだまだリアルタイムが主流のように見えます。しかし、若年層など一部では、リアルタイムでの視聴時間がかなり少なくなっており、むしろテレビ画面をリアルタイム以外の用途で使い始めている兆しがみられます。
そして行為者平均時間をみると、すでに利用している人にとっては、リアルタイム以外のテレビ画面の使い方が、次第に生活に浸透し始めているのかもしれません。

「メディア利用の生活時間」サイトでは、今回ご紹介したテレビ画面以外にも、さまざまなメディア利用や生活行動について、「全員平均時間」「行為者平均時間」どちらもダウンロードすることができます。
あなたの関心のある行動はどれくらい利用されているか、また利用している人に限ってみるとどのような結果かなど、ぜひご活用ください!

(舟越雅 研究員)