続く失業の不安と仕事観の変容
~ISSP「職業意識・2005」調査~
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NHK放送文化研究所は、‘ISSP’(International Social Survey Program)と呼ばれる国際比較調査グループのメンバーになっていて、毎年、各国共通のテーマで世論調査を行っています。2005年のテーマは「職業意識」で、人々が自分の仕事や働くことに対してどのように考えているのかを探りました。今回の報告では、日本の調査結果について1997年に行った前回調査との比較も含めて分析しました。
「仕事をする上で重要なこと」を尋ねた質問では、「失業の心配がない」を挙げた人が8割を超えて最も多く、「収入が多い」「おもしろい」「社会に役立つ」についても重要であると考えている人も7割強と多くなっています。この4つは1997年の調査でも多くの人が重要であると答えた項目で、働くうえで安定した雇用が重要であるという考え方は変化していないことがわかります。
また、仕事をしている人に健康への影響を尋ねたところ、「ストレスを感じる」「ぐったりと疲れて仕事から帰る」ことが「いつも、よくある」と答えた人の割合は、いずれも3割を超えました。とくに40~50代の中年男性では、「ぐったり」という肉体的疲労をあげた人の割合は、1997年の27%から36%に増えています。また、仕事に関する質問からは、自分が今と同じくらいの条件の仕事を見つけるのは難しいと考える一方、自分の代わりの人材を見つけるのは難しくないと考える人が多いなど、仕事について厳しい見方をしている人が多いという状況が浮かびました。
「ニート」と呼ばれる就職も職業訓練もしない若者が増えるなど、若年者の雇用をめぐる問題が議論されていますが、16歳から39歳までの有職者についてみると、「今の職場が発展するように、進んで与えられた以上の仕事をしたい」と意欲的に考える人が、97年の51%から66%に増加し、他の年代と比べても仕事に意欲的な人の割合は、若年層が最も高いことが調査結果からわかりました。