社会や政治に関する世論調査

政治・社会への関与に表れる「受動性」

~「シティズンシップ」に関する調査から~

NHKでは、日本人の政治や社会に対する関わり方などを調べるため、「シティズンシップ(市民権)」に関する調査を実施しました。この結果、政治・社会への関与についての日本人の「受身的」な意識が浮かび上がってきました。

良い市民であるために次のようなことがどの程度重要だと思うかと聞いたところ、「重要」と思う人が多いのは、「脱税しないこと」・「法律や規則を守ること」などでした。一方「重要」と思う人が少なかったのは「社会的・政治的団体で活動すること」「少し値段が高くても政治的・道徳的・環境保護的な理由で商品を選ぶこと」などでした。「重要」だと思う人が多い事柄に「受動的」なことが多く、少ない事柄に「能動的」なことが多くなっています。また、「不当・有害だと思われる法律が国会で審議されていたら、それに対して行動する可能性はあるか」という質問に対して、「大いにある」と「まあある」と答えた人を合わせた割合は19%、「まったくない」と「あまりない」を合わせた割合は66%でした。

さらに、「実際の行動」についても聞いてみました。次のような政治的・社会的行動をしたことがあるかどうか聞いたところ、「経験あり」が多い順に「請願書に署名した」(49%)、「社会的・政治的活動のために寄付や募金をした」(40%)、「政治集会に参加した」(14%)、「政治家などに意見を表明しようとした」(5%)などとなりました。自らの関与度が高い行動ほど「経験あり」が少なくなる傾向が見受けられます。

こうした政治や社会に対する関与の度合いを年層別に見てみると、年齢が低いほど関与しようという意識が低くなる傾向があることがわかりました。特に、民主主義の原点とも言える「選挙に投票に行くこと」を「重要」だと思うかどうかについては、他の事柄よりも、年齢による考え方の違いが大きくなっていました。

世論調査 研究員 小林 利行