海外放送事情

3回シリーズ報告 世界公共放送研究者会議(RIPE@2014東京大会)

【第3回】多様な公共放送 アジアにおける放送の役割

8月に開催したRIPE@2014東京大会のシリーズ報告の最終回は、1日目のシンポジウムの中から「アジアの公共放送 その挑戦と課題」の内容を中心に報告します。経済成長が目覚ましいASEAN諸国の中から、公共放送を新設したタイ、民政移管とともにメディアを自由化したミャンマー、国営から公共放送化の流れの中で、ニュース報道を専門とする商業ラジオが始まったインドネシアの3カ国から報告が行われました。Thai PBSは設立からまだ8年も経っていません。政治的混乱や自然災害が頻発する中で、市民ジャーナリストの育成を基本に市民社会との連携を作ろうと努力しています。ミャンマーには公共放送はありません。放送の自由化政策を背景に、商業メディアグループが国際世界とミャンマーとの橋渡しをしています。インドネシアでは、1998年まで民放に独自のニュースを放送する自由はありませんでした。民放は、1日14回国営放送から提供された同じニュースを流したこともあるそうです。ジャーナリストらが設立したKBRは、市民のためのニュースの提供を目指し活動を始めました。3カ国の報告から、民主化の進展とともに、メディアが生き生きと活動する様子が伝わりました。一方、民主主義のない世界に公共放送はないと言います。公共放送の存在に不可欠な放送の独立性、財源の安定性、そして人々にとって「公共放送は何のためにあるのか」という問題が浮き彫りにされました。

メディア研究部 中村美子