海外放送事情

ハリケーン「サンディ」の災害情報

~米国における防災情報提供の新潮流~

本稿は、2012年10月末にアメリカ東海岸に上陸し、甚大な被害をもたらしたハリケーン「サンディ」災害における防災情報の流れを、現地調査をもとに報告するものである。

ソーシャルメディアの台頭でメディア環境が大きな変動期にある中、放送メディアは「サンディ」災害をどう報道したのか。また、ネットやSNSは防災情報提供の過程でどう活用されたのか。実態を調べるため、筆者は2013年1月、主要な被災地であるニューヨークと、災害対応の中心になる政府機関を訪れた。

「サンディ」の災害報道で注目されたのが、ニューヨークのローカル放送局NY1である。地域に密着した取材で被災地の様子をいち早く伝えたほか、NY州知事や交通局の責任者などキーパーソンを出演させ、「災害情報の核」になっていたと評価された。

また、ネット検索エンジンのGoogle社が、政府・公的機関とも連携し「グーグル・クライシス・マップ」の画面で多様な情報を提供した。Google社は災害時に人々がアクセスする新たな情報源に成長している。

災害対応を担うFEMA(連邦緊急事態管理庁)では、グーグル社など民間企業との連携を進める方針を示し、また、自ら防災情報の提供・収集のためにソーシャルメディアを積極活用する意向を鮮明にしている。

現地調査は対象がごく一部機関に限られ、今後、全体を俯瞰する調査が必要である。それでも、放送、ネット、ソーシャルメディアなど様々なメディアを通じて、防災情報が、複合的に双方向で流れる新しい形がアメリカで生まれつつあることがうかがえた。

メディア研究部 田中孝宜