海外放送事情

シリーズ 公共放送インタビュー

【第5回・韓国】 キム・ジョンギ氏(韓国外国語大学名誉教授)に聞く

~イ・ミョンバク政権下の公共放送とメディアの現在~

韓国では放送と通信の融合が進む中、2008年2月に経済の再生、活性化を掲げるイ・ミョンバク(李明博)政権が誕生し、直後に「放送通信委員会の設置および運営に関する法律」(以下、放通委法)が施行された。この法律に基づき、それまで独立行政組織(放送委員会)によって行われてきた放送行政は、通信行政とともに一元化され、大統領直属のKCC(Korea Communications Commission, 放送通信委員会)が担うことになった。

韓国外国語大学名誉教授で、元放送委員会委員長(閣僚相当)のキム・ジョンギ(金政起)氏は、およそ半世紀にわたって、世界各国の放送政策について多くの著書や論文を発表してきた。主な著書には『明治日本言論の対韓観』(1987)、『韓国言論の病理』(1999)、『転換期の放送政策』(2003)などがある。キム教授は現政権発足後のメディア行政について、「最も際立っているのは、放送行政体制が官僚化したことである」と言う。放送通信融合の時代に合わせ、これまで放送行政を担ってきた放送委員会と通信行政を担ってきた情報通信部を統合したことについて「外見上はメディア環境の変化にともなう適切な対応に見えるが、現状では情報通信部の官僚たちが、放送通信行政を独占的に主導し、旧放送委員会出身者たちは完全に排除されている」と述べている。

本インタビューでは、上記の話を含め、イ・ミョンバク政権発足後の韓国放送界をめぐる動きをおりまぜながら、「韓国の公共放送のいま」について聞いた。

メディア研究部(海外メディア研究) 田中則広