海外放送事情

韓国におけるメディア所有規制の緩和

今年7月、韓国の国会で新聞社や大企業の放送事業進出を認めるメディア関連法の改正案が可決された。しかし、この法改正をめぐって国会では、半年以上にわたって断続的に与野党議員が乱闘騒ぎを起こすなど、混乱が続いてきた。その背景には何があったのか。本稿では、与野党対立の中で進んだメディア所有規制緩和の動きについてリポートする。

これまで韓国では、法律によって新聞社や大企業による放送事業の兼営が禁止されてきた。しかし、経済の再生、活性化を掲げるイ・ミョンバク(李明博)政権の発足後、メディア関連法の改正作業が進められた。

そして、去年12月、与党ハンナラ党が、新聞法や放送法などのメディア関連法改正案を国会に提出したことで、与野党対立が激化した。与党は、放送と通信の融合によってメディア環境が急変する中、兼営の禁止条項が、コンテンツに対する新たな投資やグローバルメディアの育成基盤構築の障害になっているため、改正案の可決はこれ以上遅らせられないと主張、一方で、野党民主党は、与党の改正案は、市場論理の強化が骨格になっていて、このままではメディアは財閥の意のままにされてしまい、公共性といった観点からも問題が大きいと批判した。

結局、与野党の主張は妥協点を見出すことができなかった。7月の与党による強行採決で、新聞社や大企業は2013年以降、地上放送の兼営が可能にはなったのだが…。

メディア研究部(海外メディア)田中 則広