海外放送事情

シリーズ 世界の公共放送のインターネット展開

第6回 韓国・KBS

IT先進国に見る視聴者サービスのありかた

シリーズ6回目は、韓国の公共放送KBSのインターネットサービス、とりわけVODサービスの現状と運営の仕組み、基本戦略をリポートする。

KBSのインターネットを利用したオンライン・サービスは2000年から本格化した。KBSはあらゆる手段を使って、できるだけ多くの人々に番組を届けるのが公共放送本来の任務であるとして、ニュースや時事教養番組だけでなく、ドラマや演芸娯楽に至るまで放送終了後2週間の無料サービスを行っている。

KBSのホームページ(http://www.kbs.co.kr)からは、テレビ、ラジオ合わせておよそ300の番組サイトにアクセスできる他、地上テレビで放送中の番組を視聴することも可能である。テレビ番組のVODサービスの場合、コンテンツはドラマ、ニュースなどカテゴリー別に6つに分類されており、56Kbpsと300 Kbpsの2種類で無料サービスが行われている。

KBSはインターネットと地上放送の連携によって、より多くの情報と利便性のあるサービスを拡張していくことで、デジタル時代における公共放送の存在感を維持するとの立場に立っている。しかしその一方で、視聴者層の中心は中高年層であり、若年層が相対的に少ないことから、VODサービスをはじめとするインターネット向けサービスの開発にも力を入れている。ドラマやショーなどといった娯楽番組を対象に2008年から始まった「ビデオマーキング」サービスもそのひとつである。このサービスは、KBSのVODサービスを利用しながらお気に入りの場面を画面右下のボタンを押してクリッピングし、自らそのコンテンツに対して名前を付けて投稿したり、知人に送ったり、あるいは、自分のブログにスクラップしたりと、地上放送のコンテンツをあたかも個人コンテンツのように使うことができるようになっている。

日本と同じく若者のテレビ離れが進む韓国において、KBSは若年層の視聴者を取り込む必要に迫られている。また、不法コンテンツ対策も避けては通れない。韓国を代表する公共放送KBSもまた、諸外国の公共放送と共通する多くの検討課題を抱えている。

メディア研究部(海外メディア)田中 則広