海外放送事情

インド放送事情

衛星放送Tata Skyの登場と有料放送市場の動向

インドで、今年8月8日、有料放送としてはDish TVに次いで2つ目、無料放送DD Direct+を含めると3つ目となる、Kuバンドを使った直接衛星放送(以降、衛星放送と表記)Tata Skyが開局した。Tata Skyは世界のメディア界の実力者ルパート・マードック氏が所有する香港のSTARとインドの大財閥Tataの持ち株会社Tata Sonsが組んで設立した合弁会社で、出資の比率はSTARがインド政府による外資直接投資(FDI)規制ぎりぎりの20%、Tata Sonsが残り80%となっている。

強力な第2の有料衛星放送Tata Skyが登場したことでインドの有料衛星放送市場のシェアをめぐる争いの火蓋は切って落とされたわけだが、2003年10月に開局した先発のDish TVがマードック氏のライバルであるスバシュ・チャンドラ氏傘下の衛星放送ということもあって、両者の争いは序盤から熱気を帯びたものとなっている。また都市部のテレビ視聴世帯をターゲットとした両者のシェア拡大競争は、これまでインドの有料放送市場をほぼ独占してきたケーブルテレビ業界にとって大きな脅威で、早急な対応が迫られている。

本稿では、満を持しインド衛星放送市場に登場した衛星放送Tata Skyの概要を伝えると共に、インドの衛星放送がこれまで辿った歩み、先発プラットフォーム(Dish TVとDD Direct+)の概要、有料衛星放送市場への参入を更に狙うグループ(Sun TVとADAG)の動向、シェア拡大に向けたDish TVとTata Skyの戦略、デジタル化を急ぐケーブルテレビ業界の対応、衛星放送とケーブルテレビの争いの行方(予測)などについて触れる。

塙 和麿