海外放送事情

変革期の米ネットワークニュース

~誰がニュースを伝えるのか~

アメリカのテレビニュースはいま、3大ネットワークの看板ニュースキャスターの相次ぐ降板・交替により、大きな変革期を迎えている。 NBCのトム・ブロコー、CBSのダン・ラザー、ABCのピーター・ジェニングズの3人は、1980年代の初めからおよそ20年にわたってアメリカ全国にニュースを伝えてきたスター・キャスターだった。9.11やイラク戦争の報道でも覇を競ったこれら看板キャスターの軌を一にした降板・交替は、アメリカ・ジャーナリズムのひとつの時代が終わったことを印象づけている。

1930年代のラジオの時代から50・60年代のテレビの時代へと、ネットワークニュースはそれを伝える幾多のニュースキャスター(アンカー)の登場とともに発展してきた。 しかしいま、ケーブルテレビやオンラインニュースの参入、ニュース接触の多様化など、新たなメディア環境の出現とともに、ネットワークニュースも新たな時代を迎えている。 インターネットを利用して誰もが情報を収集し発信する「ブログ」(blog)や、「ウェブキャスト」(Webcast)と呼ばれるインターネット放送も登場し始めた。これに対して、伝統のネットワークニュースの視聴者は、進む高齢化とともに減り続け、1980年の5200万人が2005年の2700万人とおよそ半分になった。激しい視聴率競争や企業の効率化、社会一般のメディア不信などもこれに加わり、ネットワークニュースはいま存続の危機にある。

本稿では、この大きな変革期にあって、ネットワークニュースはいまアメリカ社会のなかでどのような位置を占めているのか、ニュースの伝え方やアンカーの役割についてどのような議論が行われているのかを、アメリカのメディア・ジャーナリズムの動向や調査・研究団体の報告などをもとにまとめ、変革期にあるネットワークニュースを展望する。

主任研究員 永島啓一