海外放送事情

放送の公共的機能とニュースのオンラインサービス

インターネットの普及・利用が進んでいる。NHK放送文化研究所の2005年の調査によれば、日本におけるインターネット接触率は、この5年間で倍に増えた。その一方で、マスメディアへの接触が減りつつある。今後、インターネットの普及・利用はますます進み、マスメディアの利用はさらに低下して行くことが予想される。

しかし、インターネットは、ニュースよりも利用者個人が求める情報を入手するツールであり、また、サイバー空間で流通する情報の信用性は、マスメディアや大手のポータルサイトによる情報を除けば、極めて低い。

マスメディアの基本的な機能は、社会の構成員がその自主的・合理的判断に必要な基本的な情報を共有し多面的な視点・ものの考え方に接する環境を確保する、ということである。しかし、インターネットの普及・利用がさらに進めば、こうしたジャーナリズム機能が損なわれかねず、民主主義の過程にとっても問題となろう。

NHKは、現在、インターネットの利用を制限されているが、こうした民主主義過程にとっての基盤となる情報環境を確保するためには、NHKも積極的にインターネットが利用できるようにすることが必要だ、と考える。

研究主幹 海部一男