ことばの研究

「のど」は“イガラッポイ”?“エガラッポイ”?

~語形のゆれに関する調査(平成22年8月)から~

放送文化研究所・放送用語班では、語形にゆれのあることばについて、これまで調査を重ねてきた。今回は、「とぎ汁(トギシル/トギジル)」「悪名(アクミョー/アクメイ)」「乱世(ランセ/ランセイ)」など、平成22年8月に行った調査から、顕著な調査結果が現れたものについて報告する。

「とぎ汁(トギシル/トギジル)」「酒癖(サケクセ/サケグセ)」は、現行の『NHK日本語発音アクセント辞典』ではそれぞれ「トギシル※」「サケクセ」のみが掲載されているが、今回の調査ではアクセント辞典に掲載されていない「トギジル」「サケグセ」という発音をとる人のほうが圧倒的に多く、それぞれ87%、93%であることがわかった。また、「イガラッポイ/エガラッポイ」「イコジ/エコジ」では、ともに「イガラッポイ」「イコジ」と発音する人が全体の8割以上であった。その他、「頭突き(ズツキ/ズヅキ)」「悪名(アクミョー/アクメイ)」「異名(イミョー/イメイ)」「乱世(ランセ/ランセイ)」「現世(ゲンセ/ゲンゼ/ゲンセイ)」についても調査結果を分析した。

なお本文では、こうした調査語について、①これまでNHKがその語の発音をどう扱ってきたか、②1600年以降の国語辞典をはじめとする主な辞書がその読みをどう表記してきたかを調べた「辞書調査」の結果も併記し、そのことばの語形が日本語の歴史の中でどのように変化し、現在どのようにゆれているのかがわかるように分析している。

(※ アクセント辞典での実際の表記は「トキ゜シル」。「゜」は鼻濁音を表す。)

メディア研究部(放送用語) 太田 眞希恵