ことばの研究

若者に多い「ワカシラガ」、高年層に残る「ワカジラガ」

~語形のゆれに関する調査(平成22年2月)から①~

放送文化研究所・放送用語班では、『NHK日本語発音アクセント辞典』の改訂に向けた作業を進めている。この改訂ではアクセントのみならずそのことばをどのように発音するかについても検討するため、語形の確定が必要となる。そこで、「若白髪(ワカシラガ/ワカジラガ)」「凍え死ぬ(コゴエシヌ/コゴエジヌ)」「チータ/チーター」「ジャージ/ジャージー」など、平成22年2月に語形のゆれに関する調査を行った。11月号ではこのうち連濁に関する語について報告する。

「若白髪(ワカシラガ/ワカジラガ)」「完全試合(カンゼンシアイ/カンゼンジアイ)」は、現行の『NHK日本語発音アクセント辞典』ではそれぞれ「ワカジラガ ワカシラガ※」「カンゼンシアイ カンゼンジアイ」の順に掲載されているが、今回の調査ではともに2番目に掲載されている「ワカシラガ」「カンゼンジアイ」と発音する人が全体の7割近いことがわかった。

また、「紫水晶(ムラサキスイショー/ムラサイズイショー)」「封切り(フーキリ/フーギリ)」については、全体の7割以上の人が、現行のアクセント辞典に掲載されていない形である「ムラサキスイショー」「フーギリ」と発音していることがわかった。

その他、「凍え死ぬ(コゴエシヌ/コゴエジヌ)」「はけ口(ハケクチ/ハケグチ)」「取り越し苦労(トリコシクロー/トリコシグロー)」「いも焼酎(イモショーチュー/イモジョーチュー)」「庭作り(ニワツクリ/ニワヅクリ)」についても調査結果を分析。

なお本文では、こうした調査語について、①これまでNHKがその語の発音をどう扱ってきたか、②1600年以降の国語辞典をはじめとする主な辞書がその読みをどう表記してきたかを調べた「辞書調査」の結果も併記し、そのことばの語形が日本語の歴史の中でどのように変化し、現在どのようにゆれているのかがわかるように分析している。

(※ アクセント辞典での実際の表記は「ワカジラカ゜ ワカシラカ゜」。「゜」は鼻濁音を表す。)

(メディア研究部・放送用語 太田 眞希恵)