ことばの研究

放送と漢字について

~「字幕スーパーの漢字に関する意識調査」および諸問題~

第1部では、テレビの字幕スーパーにおける漢字使用について一般の人たちに調査した結果を報告する。

字幕スーパーに「表外字(国が定めた常用漢字表に含まれていない漢字)」を用いるべきかどうかを尋ねてみたところ、全体としては「表外字を使わないほうがよい」という回答がもっとも多かったが、若い年代の人たちを中心に「番組によって方針を使い分けてもかまわない」という意見が多く見られた。

第2部では、字幕スーパーの諸問題を考える。

テレビメディアは、走査線による画面を使う。この制約で、文字の字画が複雑なものは読み取りにくい。また、提示時間は演出者の意図により左右され、読み手の自由になるものではなく、読み取りやすい文字や表現を使わなければならない。
このような制限があるために、過去、同音漢字による置き換えや、同意味の熟語への置き換え、交ぜ書きの採用などのくふうがあった。
受信者も、音声情報とともに画面の文字情報を能動的に読み取るというくふうを重ねてきたが、最近の演出は変化し始めている。

調査によると、テレビ画面で使用している文字数はさほど多くなく、ほぼ1200種の文字で98%を占めている。

技術革新により多種多様な画面が登場しており、「書ける漢字より、読める漢字」という風潮も見られる。しかし、標準表記の確立がより効率的な運用につながることもわかってきた。

漢字制限を緩和する方向の意見も出ているが、緩和するには、客観的な調査が必要であり、現状では有効な資料となるデータは得られていない。

固有名詞を含んだ広範な漢字調査と、学習、情報機器の進展などを考えた施策が必要になっている。

(メディア研究部・放送用語 柴田 実/塩田 雄大)