放送史

放送史への証言

現場に出るニュースアナウンサー

~大塚利兵衛氏に聞く~

放送史グループでは、かつて放送に携わり、放送の発展に寄与してきた各分野の人たちから、当時の状況や苦心したことを聞き取り、「放送史への証言」として記録に残す調査研究を続けています。今回は、元NHKアナウンサーの大塚利兵衛氏(81歳)です。

昭和30年代に入り、放送がラジオからテレビへと比重を移す中で、アナウンサーたちは新しいアナウンスやリポートのあり方を模索し続けました。この中で大塚氏は、ほぼ一貫してニュースを担当し、特に災害や事件などの現場から数多くの中継リポートを行って、報道の分野でアナウンサーの活動範囲をひろげました。大塚氏は、災害報道で初めてテレビ中継された1959(昭和34)年の伊勢湾台風で、豪雨と高潮によって水没した名古屋市内の被災地から中継リポートをしたときの体験を次のように話しています。「私は、リポートする前に、テレビカメラをのぞいてみました。カメラが広い光景を撮ったときに、どこまで入るか、ズームして寄るとどのくらい拡大できるかを確認したかったのです。もう1つ、大変悲惨な情景を目の前にしているのに、カメラが映し出した映像は、キラキラと光る水面の向こうに家や松の木があり。後ろの方には雑木林も見えるというきれいな風景でした。このため、この水の下には、実は人も、収穫直前の稲もみんな沈んでいることを、ことばで補わないと悲惨な現実は伝わらないことを思い知らされました。」

インタビューでは、大塚氏が、中継リポートを重ねる中から学んでいったことをはじめ、自分で現場に行き、自分で取材するという現場志向を強めた経緯、さらに、NHK初のワイドニュース番組「スタジオ102」担当時代のことなどを中心に、うかがいました。

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