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Netflix 日本進出~国内の反応は?

アメリカ最大手の動画配信サービス会社Netflixによる,2015年秋からの日本でのサービス開始の発表を受け,国内で素早い反応を見せたのはテレビメーカーだった。

国内でトップを切ったのは東芝だった。東芝はサービス開始の半年以上前となる2月12日にNetflix 対応テレビを発表,同月20日から発売を開始した。続いてパナソニックも,同対応テレビを3月上旬に発売すると発表した。両機種ともに注目されるのは,リモコンの中でのNetflix専用ボタンの位置。比較的よく使われる「決定」ボタンのすぐ近くの,いわば“一等地”に置かれており,さらに電源が切れた状態でもこのNetflix専用ボタンを押すといきなりNetflixの画面が立ち上がるなど,同サービスにきわめてアクセスしやすい工夫がなされている。東芝によると,ライセンス契約については詳細な開示はできないとしながらも「Netflixとは昨年から国内向け対応の話し合いを進めていた。テレビ用のNetflixアプリはパソコン用と異なり,各社が自社のテレビ環境で十分なパフォーマンスが出るようにプラットフォームに合わせて実装する方式をとっており,当社も改善の必要な点などについてはNetflixへフィードバックを行い,サービス改善への協力を行っている」とNetflixとの共同開発を認め,同社との緊密な連携があることがわかった。

一方,Netflixと同じく定額制動画配信サービスを行っている国内事業者の反応はどうだろうか。Netflix同様にアメリカ生まれで2011年から日本国内での運用を行っているHuluは,取材に対し「オンライン動画配信事業の市場をともに切磋琢磨しながら拡大していければと考えております。我々もより一層の充実したサービスの拡大に努めます」と,事態を静観するコメントを出した。

また,2014年末時点で430万契約と同サービス事業者で国内最大規模のdビデオは,自社の強みとして全国に約2,400店舗あるドコモショップでのきめ細かいサービスがあるとしながらも,今後対策を検討する点をいくつか挙げた。まず,専用ボタンに対抗するため,現在より簡単にテレビにアクセスできるセットトップボックスなどの施策,Netflixの成長の一因である,充実したレコメンデーション(おすすめ)機能に対抗できるサービスを,これまで蓄積してきた視聴ログをもとに今秋までに整備すること,同じくNetflixの強みである,豊富な資金力を生かした充実したオリジナル番組のラインナップに対抗すべく,BeeTVでの実績を生かし,オリジナルコンテンツを質・量ともにさらに充実させること,などである。

また,Netflixが日本独自のコンテンツを作る上で焦点となってくるのは,コンテンツ制作能力の高いテレビ局の動きである。テレビ東京は2月の定例会見で,Netflixからコンテンツ提供の協力依頼があり,取引先の候補の1つとして交渉中であることを明らかにした。

Netflixはサービスを始めるまでの期間,同社の資金力を生かした一大キャンペーンや,テレビ局や番組制作会社との連携などを続々発表することが予想される。一方で既存の動画配信事業者も,料金やサービス面で様々な施策を打ってくるだろう。Netflixは日本のテレビ・動画ビジネスに大きな変革をもたらす「黒船」になるのか。今後の動きに注目していきたい。

松本和也