メディアフォーカス

中国メディア,香港の民主化要求運動を大々的に批判

香港で9月28日に始まった,学生らによる民主化要求運動に対し,中国の主要メディアは9月末から大々的に批判するキャンペーンを展開した。この運動は,中国の国会にあたる全人代=全国人民代表大会の常務委員会が8月,2017年に実施される香港の行政長官選挙について,立候補者を制限する措置を決定したことに反発して学生らが始めた。誰でも立候補が出来る完全普通選挙を要求し,金鐘や銅鑼湾,旺角など香港の繁華街の道路を占拠,11月初め現在も座り込みを続けている。

この運動に対し中国中央テレビ(CCTV)は9月30日,夜7時からのメインニュース『新聞聯播』の終わりの方で,「(中心街の)占拠は経済・民生に重大な影響を与えており,香港の各界が正常な秩序の回復を呼び掛けている」と題したニュースを放送,内容は新華社の原稿をアナウンサーが読み上げるもので,映像はなかった。『新聞聯播』ではその後10月1日,5項目めのニュースで“違法な集会”を非難する人民日報評論員の文章をアナウンサーが読み上げた。

現地取材した映像の放送が始まったのは10月2日からで,その後は15日まで毎日,道路の占拠によって交通がマヒしたことや学校が休校になったこと,株価が暴落したことなど市民生活に多大な影響が出ている状況を強調,市民のインタビューではもっぱら占拠に反対する声を紹介したが,座り込みを続ける学生への取材はなかった。また,中国本土のネット上で香港の秩序回復を求める声が上がっていると次々に紹介,中国本土の市民が香港の民主化要求運動を支持していないと印象づける内容となっていた。

この他,中国共産党機関紙の人民日報も連日,評論の中で運動を“違法なもの”と非難,香港警察による早急な事態の収拾を支持した。

この問題で中国政府は,中国本土で運動に共鳴する意見を表明した人物を次々に拘束した。これは,貧富の格差や汚職の蔓延など,中国共産党の統治に揺らぎが生じる中,香港の民主化を認めればその潮流が中国本土に波及しかねないと,中国政府が警戒心を強めているためと見られている。また,ネット上では,香港の民主化要求運動を示す「雨傘革命」という言葉が「百度」(Baidu)などの検索サイトで当初表示不可能になり,11月初めの段階では表示はされるものの,「関連の法律法規と政策により,一部の検索結果は表記されません」との注意書きが付いている。

一方,香港の民主化要求運動の現地での報道を巡っては,運動を支持する立場のりんご日報の本社に反対派の群衆が押し掛け,新聞の配送を妨害したり,未発送の新聞に油をぶちまけたりする抗議行動に出た。これに対してりんご日報は裁判所に妨害行為の停止を求める訴えを起こして認められたが,抗議行動はその後も続いている。また,運動に対する反対派の群衆が開いた集会で,TVBやRTHKなどの取材クルーが暴行を受ける事案も頻発,香港記者協会は警察に対し,取材者の安全確保を徹底するよう申し入れた。

民主化要求運動への評価を巡っては,りんご日報が一貫して支持する一方,親中派の文匯報や大公報は強く批判,さらにこれまで中国政府と香港の民主派の間で中立的な立場を取ってきた明報や信報も社説で占拠の中止を求めており,中国政府の香港メディアへの影響力拡大を指摘する声もある。

山田賢一