NHK放送受信契約 未契約者に対する訴訟で初の司法判断
テレビ受信機を設置しているが,放送法64条1項に締結義務を定める放送受信契約の締結や受信料の支払いに応じない未契約者に対して,NHKが受信料の支払いを求めた民事訴訟(未契約訴訟)で,横浜地方裁判所相模原支部が6月27日,NHKの契約締結申込みへの承諾と,受信機設置が認められる時期に遡った受信料の支払いを被告の未契約者に命じる判決を行った。未契約訴訟で,実質的な司法判断が示された初めての判決である。
本判決では,契約申込み後一定期間の経過で受信契約が成立するとは言えないとしつつ,放送法の規定趣旨等から,裁判で受信契約締結に応諾する意思表示を求めるNHKの請求には理由があること,また,受信機設置の時点に遡って受信契約に定められた受信料の支払い義務があること等が示された。
NHKは,2009年に未契約訴訟を開始したが,これまで訴訟提起後の契約締結,支払いによる訴えの取下げや和解等,判決によらないで解決できたケースも多く,また判決に至ったものはいずれも訴訟上,被告側からの反論がないまま,NHKの主張が認められたもので,実質的な審理を経て裁判所の判断が示されたのは本判決が初めてとなった。公共放送維持のための特殊な負担金として,受信者側の契約締結義務を法定する他に例のない受信料制度であり,控訴されている本件上級審や他の未契約訴訟での今後の司法判断も注目されるところである。
なお,NHKは,訴訟は最後の手段であり,丁寧な説明で理解を得ることが基本であることは変わらないとしている。