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ギリシャ,新公共放送設置法案が議会で可決

政府によって突然,公共放送ERTの全チャンネルが放送停止となったギリシャでは,政府与党側がERTに代わる新しい公共放送の設置に関する法案を議会に提出し,7月19日に賛成155,反対104の賛成多数で可決された。

この新しい公共放送は,NERIT(New Hellenic Radio Internet and Television,新ギリシャ・ラジオ・インターネット・テレビジョン)と名付けられ,政府から独立した株式会社組織とされている。政府はERTの職員数より650人少ない2,000人を雇用し,秋ごろから本格的な放送を始めたいとしている。

巨額の債務を抱えEUなどから支援を受けているギリシャ政府は6月11日,緊縮策の一環として公共放送の閉鎖を発表し,その日のうちにテレビ,ラジオの放送が打ち切られた。これに対してEBU( ヨーロッパ放送連合)が,公共放送の独立性を踏みにじるものだと非難するなど,内外で強い反発が起きた。

ギリシャの国家評議会は6月17日,公共放送をすぐに再開すべきだという裁定を下し,政府側は,7月10日から放送を一部再開した。しかし,ニュースの時間帯にスタジオからの放送はなく,アーカイブのドキュメンタリーや子供番組などを放送し,その画面の下に時折文字情報としてニュースのダブりがあるだけとなっている。

一方,閉鎖されたERTの建物には解雇されたERTのジャーナリストらが多数残っており,インターネットのサイトなどを通じてニュースの発信を続けているほか,EBUの協力を得て,EBUニュースに向けたニュース素材の衛星伝送も続けられている。 

新田哲郎