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韓国放送労組,社長退陣を求めてスト相次ぐ

2012年12月の大統領選挙を控える韓国では,その前哨戦として4月に国会議員総選挙が実施される。大統領選挙の行方を占う上で重要な選挙を前に,放送局の労働組合が,政府・与党寄りの不公正な報道を強いているとして,現政権への批判を強めている。

KBSに次ぐ韓国第2のキーステーションであるMBCの労組は,「公正な放送を,現政権が送り込んだ社長が阻害している」として,社長退陣などを求めて1月30日から無期限ストライキに入った。これに続き,3月6日にはKBS第2労組「全国言論労働組合KBS本部」の一部組合員も,ストライキに突入した。記者やディレクターなどおよそ1,000人が加入するKBS第2労組は,「現在の社長が就任してからは,権力を批判・監視するニュースや番組がKBSから消えた」として社長退陣と,懲戒処分を受けた労組幹部に対する処分の撤回を求めている。また,第2労組は,スト8日目の13日から『リセットKBSニュース9』と題して,独自に制作したニュースをユーチューブなどで公開し,KBSのニュースが取り上げなかった情報を伝えている。一方,KBS側は,今回のストは違法である,として,厳重処罰の方針を示している。このほか,ニュース専門チャンネルYTNの労組も,3月8日からストライキに入っている。

これら3局の労組は,2月に共同闘争委員会を結成し,3月5日に共同でストライキ宣言を行ったが,ストライキの動きは他の新聞社や通信社にも広がっている。また,今回の事態に対しては15日,研究者93人がストライキの支持声明を出している。

田中則広