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民放キー局5社と電通が共同でテレビ向けVODサービス

在京の民放キー局5社(日本テレビ・テレビ朝日・TBS・テレビ東京・フジテレビ)と電通は,インターネットテレビ(インターネットを通じて動画視聴が可能なテレビ受像機)向けに,民放各社が主体となった有料課金型のVOD(ビデオ・オン・デマンド)サービスを共同で推進することで基本合意した。2012年度から2014年度を本格運用に向けた準備期間として,試験的に導入する。

今回の計画は,テレビの価値を向上させるという共通認識に基づき,「視聴者により多くのテレビ番組への視聴機会を提供することで,テレビ番組の視聴者層を拡大し,テレビ番組のファンを増やそうとするもの」としている。このため,VODサイトでの収益向上よりも,地上波放送でのリアルタイム視聴(現在放送中の番組をライブ視聴すること)の価値向上に重きが置かれている。

利用形態は,アクトビラなど既存のテレビ向けVOD玄関サイトのように1つの共同サイトに遷移するのではなく,リアルタイムの番組画面から各局独自のVODに飛び,また元のチャンネルに戻るというスタイルをとる。そのため,VODの視聴料金についても,各社ごとにキャンペーンを実施することで差が生じたり,VOD視聴画面の位置や大きさも各社各様の違いが生じるなど,各社なりの編成戦略が活かされる仕組みとなる。

また,リアルタイムと過去,未来を自由に行き来できるサービスを目指すとしており,放送(現在)とVOD(過去)の行き来だけでなく,次週(未来)の放送番組の視聴率を上げるためのVODコンテンツを用意したり,放送局が出資する映画の割引チケットを配布するなどして興行収入向上に結びつけたりするなどの戦略が想定されている。

参加企業のうち電通は,民放5社から業務委託を受けてサポートする役割を担う。リアルタイム視聴拡大の流れを作り出すことで,電通にとっては,テレビ広告価値の維持・向上につなげる利点がある。

支払い方法については,クレジットカードや銀行引き落としのほか,スマートフォンやタブレット端末などマルチデバイスでの利用を視野に,携帯キャリア経由での料金回収の可能性について,キャリア各社とも交渉している。

パナソニックなどのテレビメーカーとも交渉が続けられており,現状のテレビで使えるようになるのか,新たなテレビや対応するSTB(セット・トップ・ボックス)を購入させる形をとるのか,また,SNSサービスを組み合わせるのかを含め,現時点では未確定要素が多く存在する。関係各社との調整に時間がかかるため,早くても来年春からの試験運用開始となると言う。

アメリカにも同様のサービスとして,FOX・NBC・ABCなど民間放送事業者が共同で設立したhulu(フールー)があり,人気を集めている。今年9月1日には,アメリカ以外では初めて,日本国内でサービスが開始され,BSの新規参入を含めて海外の放送コンテンツ流入の動きが加速している。

視聴者の限られた可処分時間を奪い合う争いは激しさを増しており,民放各社の放送収入拡大は容易ではない。各局コンテンツの横断的な検索機能など,共同運営のメリットをどこまで具現化できるかに,その成否がかかっている。

小川浩司