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携帯端末向けマルチメディア放送ハード事業者はNTTドコモ陣営に

地上テレビのアナログ放送終了で空く周波数帯を利用して始まる携帯端末向けマルチメディア放送について,総務省は2010年9月,NTTドコモやフジテレビが出資する「株式会社マルチメディア放送」を,全国向け放送の受託放送(ハード)事業者として選定した。

携帯端末向けマルチメディア放送は,携帯電話やカーナビに番組をリアルタイムで流したり,映画やドラマをダウンロード配信したりするもので,使用帯域によって全国向け放送と地域向け放送(県域が中心)に分かれる。

このうち全国向け放送のハード事業をめぐっては,国産規格を採用する「株式会社マルチメディア放送」(NTTドコモ系)と,米企業が開発した規格を採用する「メディアフロージャパン企画株式会社」(KDDI 系)の間で激しい参入争いとなり,総務省は,審査の透明性を確保するとして,事前に事業者を内定しないまま,電波監理審議会(総務相の諮問機関)に選定を委ねる異例の対応をとった。

比較審査の結果,電波監理審議会は9月8日,ハード利用料が相対的に安くコンテンツ事業者が参入しやすいことや,財務的基礎が充実している点を挙げて,「株式会社マルチメディア放送」の参入が適当とする答申を出した。これに従って,総務省は同社をハード事業者に決定し,翌9日, 基地局(無線局)の開設計画の認定を行った。今後,コンテンツ事業者の選定が行われたのち,2012年4月に放送が始まる予定となっている。

一方,地域向け放送については,2010年9月末時点で,ハード事業者決定の見通しは立っていない。

村上聖一