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メキシコ政府,地デジ移行計画を早める

メキシコ政府は,9月2日に公布した大統領令で,テレビの地上アナログ放送の終了とデジタル放送(アメリカと同じATSC方式)への移行を,従来の計画より6年前倒しして2015年末までに完了すると発表した。メキシコは,これまで,2004年に発表した計画により,2021年末までにデジタル放送への移行を完了するとしていた。

今回発表された大統領令によると,アナログ放送の終了とデジタル放送への移行は来年から開始し,遅くとも2015年末までの5年間で全土でデジタル化を完了する。そのため,各省庁の閣僚らによる「デジタル移行委員会」を組織して,国民への周知を含めた各種施策の立案と実行に当たらせるほか,経済省には,国民がデジタル放送受信に必要な機器を入手できるよう財政措置を含めた対策を講じることを義務づけている。

カルデロン大統領は,地元紙のインタビューに対し,デジタル化を早めることで放送業界への新規参入を促し,業界の寡占状態を解消できると話している。メキシコでは,TelevisaとTV Aztecaの2 大テレビ局がテレビ視聴シェアの大部分を占める状態が続いている。

国家地理統計院(Instituto Nacional de Estadistica y Geografia)によると,メキシコでデジタル放送が受信可能なのは,2009年時点でテレビ視聴世帯の13.6%(370万世帯)に過ぎない。このため,今回の計画に対しては実現を疑問視する声も上がっているほか,貧困層世帯のデジタル化には巨額の財政支援が不可欠になると予想され,論議を呼んでいる。

斉藤正幸