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大相撲野球賭博問題NHK,名古屋場所生中継を中止

NHKは,日本相撲協会の親方や力士の野球賭博問題で,2010年7月11日から始まった名古屋場所の生中継放送をテレビ,ラジオともに中止した。

相撲界では,10年5月以降,親方が暴力団関係者に桟敷席を斡旋していたことが明るみに出たのに続いて,大関・琴光喜や大嶽親方らが,暴力団の関与が指摘される野球賭博を行っていたことが判明して,日本相撲協会の杜撰(ずさん)なモラル管理に厳しい批判が集中した。

こうした事態を受けてNHKは,7月の名古屋場所の取組みを生中継するかどうか検討していたが,10年7月6日,正式に中止することを決め発表した。

NHKの福地茂雄会長は記者会見で,中止の理由について,

  • 野球賭博問題は,大相撲の根幹に関わるもので,反社会的な勢力である暴力団の関与も指摘されるなど極めて重大で遺憾な事態だと考えている。
  • 社会的にも大きな反響があり,視聴者からも厳しい意見が寄せられているが,6割以上が「中止すべきだ」という声だった。
  • 再発防止のために相撲協会は「ガバナンス委員会」を立ち上げると聞いたが,委員会のメンバーや改革の方向性についてはまだ具体的な道筋が見えていない。
などと述べた。

名古屋場所は,大関・琴光喜の解雇,十両以上では野球賭博にかかわった力士9人が謹慎休場させられる異常な事態のなかで開催された。横綱・白鵬が3場所連続で全勝優勝し,連勝記録を歴代3位の47に伸ばすなど場所を盛り上げたが,相撲協会が外部からの表彰を辞退したため,天皇賜杯の授与もない寂しい千秋楽となった。

さらに,地方場所の宿舎の確保にからんで,新たに親方と暴力団関係者との付き合いが明るみに出るなど,相撲界改革は容易ではないとみられる事態となっている。

NHKは,大相撲ファンの要望に応えるため,取組み終了直後の午後6時台に録画で中入り後の取組みを中心に22分~ 30分間のダイジェスト版を連日放送した。

視聴率は初日の11日が12.4%,千秋楽の25日が9.2%で,生中継実施時の視聴率と大きな変化はなかった(いずれもビデオリサーチ調べ,関東地区)。

日本相撲協会は,場所が終わった日の25日に理事会を開き,名古屋場所分の放送権料を辞退することを申し出て,NHKはこれを受け入れた。放送権料は年間20 数億円といわれ,名古屋場所分は4億円程度と推定されている。

NHKの大相撲テレビ生中継は1953年から行われているが,生中継の中止は今回が初めてである。中止については,民放連会長が評価したのに対して,場所後の横綱審議会では中継すべきだったとの個人的意見が表明されるなど賛否両論があった。

NHKは,「外部有識者による特別調査委員会」(座長・伊藤滋早稲田大学特命教授)や「ガバナンスの整備に関する独立委員会」(座長・奥島孝康高野連会長)の改革に向けた勧告・意見を相撲協会がどう実行するのかを見ながら,視聴者の反応も勘案して,9月12日から始まる秋場所の生中継を実施するかどうかを決めることにしている。

奥田良胤