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新国際放送「NHKワールド」 ネット視聴が好調

2009年2月にスタートした外国人向け映像国際放送「NHKワールド」のインターネット視聴が,09年3月末までに年間5,000万ページビュー近くとなり,前年度比で2 倍となった。09年2月には1か月でこれまで最高の560万ページビューに達した。

日本の国際放送は,従来はラジオを主体としていたが,NHKは1995年に欧州,北米でテレビ国際放送を開始して以降,映像による世界への発信を強化してきた。

一方,政府は「外国人向け」に映像情報発信を強化する方針を決め,総務省の「情報通信審議会」が事業主体などについて検討していたが,07年8月に,

  • 番組制作等をNHK 子会社に委託する。
  • 子会社自身も独自の放送を実施する。
  • NHK既存のリソースを有効に活用しながら,「外国人向け」放送の特殊なノウハウを子会社に効率的に蓄積,発展させていく。

を趣旨とする答申を行い,国費の投入と民間による出資および支援,子会社独自放送部分には広告収入の可能性を追求することを求めた。

改正放送法(07年12月成立)では外国人向け国際放送が新たに位置づけられ,NHKは子会社に業務の一部を委託すること,子会社と連携して外国人向けの放送を行うことが義務付けられた。

改正放送法に基づき,「日本国際放送」(JIB)が08年4月に設立された。NHKの経営委員長(当時)が放送内容に国益主張を求めたこともあって,民放連会長が,国益をめざす放送なら国策放送になりかねず,民放は参加しづらい,と発言するなど当初民放局は消極的だったが,最終的には在京キー局5局のうちテレビ東京を除く4局をはじめ,商事会社なども資本参加した。こうした経緯のもとでNHKとJIBが連携して「NHKワールド」が09年2月から開始された。政府は,放送法に基づき「国の重要事項に係わる事項」などについて放送するよう要請しているが,実際の番組制作にあたっては,NHK,JIBともに編集権を確保している。

「NHKワールド」は,NHK本体が独自に制作している毎正時30分の英語ニュースや音楽やアニメ,文化などの独自番組,それに国内放送を英語化した番組を世界に向けて発信している。同じチャンネルのなかにJIBがスポンサー付きで放送する毎週1回30分間(5回の再放送がある)の枠が設けられている(09年3月現在)。

「情報通信審議会」は,イギリスBBCの国際放送「BBCワールド」と同レベルの番組編成を行うためには,事業安定性の観点から,持続的・安定的な国費の投入が不可避だと指摘したが,国からの交付金は09年度予算では35億円で,NHK国際放送予算の19%に過ぎない。また,JIBの番組制作は,不況でスポンサーがなかなか見つからず,「NHKワールド」のなかでのシェアはまだ少ない。

国際放送であるため,国内のテレビでは視聴できないが,NHK制作のニュースと独自番組については,「NHKワールド」のホームページで,国内でも放送と同時に見られるようになっている。2月のスタート直後からホームページへのアクセスが急激に増えたのは,国内からのアクセスが多かったからではないかと見られている。

奥田良胤