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NABショー,モバイル放送に注目集まる

恒例の全米放送事業者協会(NAB)の見本市「NABショー」が,4月20日から23日までラスベガスで開催された。深刻な不況下での今年の参加者数は,10万人を超えた去年と比べて約2割減の約8万4,000人であった。NABショーの参加者数は,史上最多を記録した2001年の11万人をピークに減少傾向が続いており,今年は不況がそれに追い打ちをかけた格好である。

今年の話題の中心は,移動体通信機器向けのサービスで,「09年はモバイルTV元年になる」(ジョン・エックNBC社長)といった議論が注目を集めた。開会式ではデイヴィッド・レアNAB会長が「不況の影響で放送局は厳しい状況に直面しているが,一方で大きな成長のチャンスもある」として,全米約800 の放送局が加盟してモバイル放送規格の設定に取り組むオープン・モバイル・ビデオ連盟(OMVC=Open Mobile Video Coalition)について触れた。そして「どこにいても携帯機器で『ロスト』や『ヒーローズ』などの人気ドラマをはじめ,好きなニュースや番組を視聴できるようになる」と強調した。

また,今年は3D技術も注目を集めた。日本のNHKの3D技術の展示(複眼レンズを用いた立体映像など)や3D撮影機材などが話題を呼んだほか,3D技術をどのように放送に応用していくかといった議論が活発に展開された。モバイル放送や3D技術を活用するビジネスモデルはいまだ確立されておらず,今後の大きな課題となるが,放送業界ではこれらの技術,サービスが今後の業界をけん引していくのではないかと期待が集まっている。

米倉 律