メディアフォーカス

契約書,制作費支払い,著作権など総務省,番組の制作委託にガイドライン

民放局の経営環境が,金融・経済危機の深化にともなって厳しくなっているなか,外注番組の制作単価の引き下げなどが顕在化しているが,総務省の「放送コンテンツの製作取引の適正化の促進に関する検討会」(座長・舟田正之立教大教授)が,取引適正化のガイドラインをまとめ,2009年2月25日に公表した。

放送番組の制作委託は,放送局が圧倒的に優位な立場にあり,契約書が交わされないことや,制作費の支払いが番組納入日起算ではなく放送日起算であるなど,下請法に違反しかねない実態がかねてから指摘されていた。このため,同検討会は現状を検証して,プロダクション側のインセンティブを向上させる立場から,取引の適正化について検討を行い,プロダクション29社,地上テレビジョン放送事業者19社から制作委託の実態についてヒアリング調査を実施して,問題となりうる事例,望ましい事例をそれぞれ列挙するかたちで,ガイドラインを示した。

問題となりうる事例として,

  • 番組制作委託の発注の時点では契約書は交わされず,放送後に契約に関する書面が送られる。契約書が交わされる場合も,ほとんどは金額の記載がない。
  • 金額は口頭で告げられ,番組納入後にプロダクションが確認するまでは放送局から金額の連絡がない。
  • 制作費は放送日以降に支払われ,放送日が遅れれば支払い期日も遅くなる。制作段階での経費はすべてプロダクションが負担している。
  • 制作した番組の著作権は放送局に帰属すると契約書に記載されているが,著作権譲渡に関する価格は明示されていない。番組の二次利用権等も一方的に放送局に帰属することになっている。
  • レギュラー番組の制作で,番組改編期に放送局が経費削減を理由に一方的に制作費を減額する。
  • 番組を納入したあとの業務の追加発注に関して追加支払いがない。
などを列挙している。

このような実態を改善するため,同検討会は以下のような事例を望ましい事例として列挙し,適正な取引が行われることを期待している。

  • きちんと契約書を交わし,番組の具体的内容が確定している場合は契約金額を明示する。制作費は双方が協議して決める。
  • 制作費の支払いは放送日起算ではなく,納入日起算とする。制作費の一部前払いの努力をする。
  • 著作権に関しては,著作権はプロダクションに帰属させ,著作権を局に帰属させる場合には,「著作権の対価」にかかわる部分を制作委託費とは別に支払う。二次利用に関しては放送局とプロダクションが協議する。
  • レギュラー番組の制作費は,放送局が同じ内容,品質を求める場合には,一方的に引き下げない。従来に比して低い単価とする場合には,内容,企画,キャストを見直す。
  • ディレクター等の単価は経験年数に基づいて設定し,経験とともに単価を上げてモチベーションを高める。

奥田良胤