メディアフォーカス

ライブドアがフジに約310億円 損害賠償訴訟で和解

ライブドアがフジテレビの筆頭株主であったニッポン放送の株を買い占め,フジテレビに影響力を行使しようとして両社が対立した事件で,当時和解のためにフジテレビが購入したライブドア株の株価がライブドア経営陣の不正で急落し,フジテレビが損害賠償を求めていた訴訟で,ライブドア(LDH)が請求額の90%にあたる310億5,000万円をフジ・メディア・ホールディングス(フジテレビは 2008年10月に認定放送持株会社フジ・メディア・ホールディングスを設立した)に支払うことで2009年1月22日に和解した。

ライブドアのニッポン放送株の取得

2005年2月,インターネット関連事業を展開していたライブドアが,フジテレビの筆頭株主であったニッポン放送の発行済み株式の35%をグループで取得したと発表し,フジテレビに業務提携を要求した。ラジオのニッポン放送は,事業の売上げ規模ではフテレビの10分の1以下で,株価もフジテレビの3分の1 だったが,フジテレビの発行済み株式の22.51%を持つ筆頭株主で,規模の小さいラジオ局が,資本関係ではフジテレビに影響力を行使できる立場にあった。このため,フジテレビはこうしたねじれ現象を解消しようと,ニッポン放送株の公開買付け(TOB)を05年1月に開始した矢先の出来事であった。

フジテレビ側は対抗策を講じたが成功せず,ライブドアはその後も株を買い増して,05年3月にはニッポン放送株の過半数を取得するにいたった。両社の対立は,既存の放送メディアと新興のIT事業の攻防として,社会的に大きな関心を集めた。

提携合意と証券取引法違反の摘発

ライブドアがニッポン放送株の過半数を取得したことで,両社間で事態打開の協議が進められ,05年4月に両社は資本提携と業務提携等について基本合意に達し,70日間にわたる株買占め紛争は収束した。

基本合意の概要は,①ライブドアグループが,保有するニッポン放送株(1,640万株)を1株6,300円でフジテレビに譲渡する,②フジテレビが,ライブドアが実施する第三者割当増資の440億円を引き受けてライブドアに資本参加する,③フジテレビとニッポン放送,ライブドアは,放送とインターネットとの融合領域における業務について提携を協議する,というものであった。

ところが,06年1月に東京地検特捜部が,ライブドアが粉飾決算で赤字を黒字にした疑いがあるとして,証券取引法違反容疑で摘発し,3月に堀江貴文氏らライブドアの経営陣を有価証券報告書虚偽記載の罪で起訴した。この摘発でライブドアの株価が急落した。事件摘発のあと,フジテレビは取得したライブドア株を95億円で売却したが,取得価格440億円との差額345億円の損失が発生した。

東京地裁は07年3月に堀江被告に懲役2年6か月の有罪判決を言い渡した。フジテレビは東京地裁の有罪判決を機に,345億円をライブドアに支払うよう求める訴訟を起こした。

この訴訟の和解が1月22日に成立したもので,ライブドアとフジテレビの紛争は4年かかって収束することとなった。

奥田良胤