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「ねつ造」に関する新行政処分放送法改正案を国会に提出

政府は2007年4月6日に放送法改正案を閣議決定し,国会に提出した。

『発掘!あるある大事典Ⅱ』に端を発した番組での「ねつ造」に対する新行政処分については,「虚偽の説明により事実でない事項を事実であると誤解させるような番組」を放送し,国民生活に悪影響を与えたか,与えるおそれがあると認められる場合には,総務大臣が「再発防止計画の策定及びその提出を求めることができる」との内容で盛り込まれた。

総務相が免許の取り消しや停波を命ずる行政処分をすることができるが,「ねつ造」事件が明るみに出て以降,強制力のない行政指導との間に大きな差があり,今回のような不祥事に対応するため中間的な行政処分が必要だと総務省は強調してきた。

これに対して,放送界をはじめ第三者機関の放送倫理・番組向上機構(BPO),日本弁護士連合会などが放送内容に対する行政の介入を招きかねないと懸念を表明していた。

たとえば,日本弁護士連合会は2007年3月28日に出した「会長談話」で,「ねつ造」は許し難いし二度と繰り返されることがあってはならないとしながらも,「行政機関が,免許権限を背景として再発防止計画の提出を求めることは,その要件が必ずしも明確でないことも相まって,放送事業者に萎縮的効果をもたらすおそれが強く,国民の知る権利を損なうものとなることが懸念される」とし,「放送倫理上の問題は,放送事業者が自らを厳しく律することによって解決されるのが望ましい」と指摘した。

放送界は「ねつ造」等に対処するため,問題が起きた場合に調査・検証をして放送局に再発防止策を勧告する新委員会を第三者機関であるBPO内に5月中旬にも発足させることを決めている。

新たな行政処分について菅総務相は「国民生活に悪影響を与えるか,そのおそれがある場合で,放送局が認めた場合のみに適用する」考えを明らかにした。また,BPOの新委員会について「BPOによる取り組みが発動されるなら,私どもとしては作動させないものにしていきたい」と述べ,BPOによる再発防止策が機能している間は,行政処分規定を凍結する考えを示した。さらに,このような考えを,提案理由の説明や法案審議での大臣答弁のなかで述べることを明言した。

放送法改正案にはこのほか,NHK関連で,経営委員会の権限を強化するとともに,役員の職務執行を監査する委員会の新設などガバナンス強化が提案された。また,新たな外国人向け映像国際放送の実施は一部を子会社に委託すること,過去の番組をインターネットで有料配信できるようにすること,などが盛り込まれた。

しかし,受信料の支払い義務化については,総務相が求めた受信料の2割値下げにNHKが応じず,2007年9月に新たな改革案をまとめるとしたため,見送りとなった。

民放局に関連する部分では,これまでの複数局支配禁止が見直され,複数の放送局を傘下に所有できる認定放送持株会社を認める規定が盛り込まれた。

また,携帯端末向けデジタル放送「ワンセグ」で独自番組の放送を認める規定も提案された。

奥田良胤