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英経営委員長のマイケル・グレイド氏が突然の辞任

イギリスのBBCを監督する経営委員長のマイケル・グレイド氏が,11月28日に辞任し,2007年1月付けで国内最大の商業テレビであるITV会長に就任した。

グレイド氏は,イラク戦争報道をめぐる政府との対立によって引責辞任したギャヴィン・ディヴィス前経営委員長の後を受け2004年5月に経営委員長に就任した。その直後の6月には現会長のマーク・トンプソン氏を指名し,BBCの将来ビジョンを発表するなど,特許状更新の道筋をつけた。今回の特許状更新議論では,公的資金である受信許可料を財源とするBBCの企業統治のありかたが焦点の1つとなり,グレイド氏は現行の経営委員会体制を維持しつつ,内部における監督と執行責任機能を分離する改革を提案した。しかし,政府は,監督はBBCトラストに,執行は執行役員会に,とボードの明確な分離を決定して,グレイド氏をトラスト会長に任命した。

ITVは,公共サービステレビとして,BBCにとって最大のライバルであるが,過去10年余り多チャンネル・デジタルの競争の中で経営・編成戦略に失敗し,視聴シェアを大きく落としている。また,今回のグレイド氏の去就が明らかになる直前の11月17日には,衛星放送のBSkyBがITVの株式の法定上限に迫る17.9%を取得したことが明らかにされるなど,経営方針の変更に迫られる可能性も生まれてきた。グレイド氏は,「BBCとITVの競争関係によって,イギリスの公共サービス放送は維持されてきた。ITVの建て直しを図ることが,ひいてはBBCの向上につながる」と,抱負を語っている。

中村美子