メディアフォーカス

フジテレビがライブドア株を売却USENがライブドア支援へ

ライブドア株の12.75% を所有しているフジテレビが2006年3月16日,株をすべて有線放送最大手・USENの宇野康秀社長に売却すると発表した。売却額は1株71円で総額は94億9,500万円。

同時にフジテレビは,系列のニッポン放送に対するライブドアの敵対的買収事件の和解にあたって第三者割当増資で取得したライブドア株の株価が,証券取引法違反容疑事件で暴落したために多大の損害を被ったとして,損害賠償を求める方針を明らかにした。

フジテレビは,2005年1月ニッポン放送株の公開買付け(TOB)を開始した。系列のニッポン放送はフジテレビの発行済み株の22.51%を保有する筆頭株主であった。フジテレビは,同社を子会社化して,名実共にフジサンケイグループの中核企業になる予定であった。ところが,2月にライブドアがニッポン放送株の34.99% を取得したと突然発表し,その後はフジテレビとライブドアの間でニッポン放送株をめぐって激しい攻防が展開された。3月末にはライブドアの所有株は50% を超え,ニッポン放送を子会社化することも可能となった。しかし,ライブドアによる経営支配にニッポン放送が激しく反発したこともあって,両社は2005 年4月18日に和解し,ライブドア所有のニッポン放送株をフジテレビが買い取るとともに,両社が業務提携を協議することになった。和解に際して,フジテレビはライブドア株の12.75% を約440億円で購入しており,今回の売却額との差額,約345億円がフジテレビの損害となっている。フジテレビとライブドアの業務提携は,まだ具体化しておらず,今回のフジテレビの株売却を機会に業務提携も解消されることになった。

ライブドアは,堀江貴文前社長をはじめ幹部が証券取引法違反容疑で2006年1月に逮捕されて以降,信用が失墜し,経営危機が言われていたが,USEN が支援に乗り出すことを表明した。USEN は,捜査中でライブドアの資産状況調査ができないため,株主訴訟などを避けるために,フジテレビが所有する株は会社が直接買うのではなく,宇野社長個人が買い取ることにした。

USEN は,自社の無料動画配信サービスにライブドアが運営するポータルサイト(入り口)を連動させれば,ユーザーを増やす効果があると判断しており,3月28日に両社はウェブサイトを相互にリンクしたと発表した。

ライブドアによるニッポン放送株の買占めは,既存放送メディアと新興IT 企業の対立だと騒がれた。半年後の2005年10月には楽天がTBS 株を買い進めて筆頭株主となり,TBS に対して共同持ち株会社方式による経営統合を申し入れた。TBS がこれを拒否し,結局両社は金融機関の仲立ちで,業務提携協議をすすめることなどで11月30日に和解した。しかし,2006年3月末現在,業務提携の具体化はまだ実現していない。株の所有を背景に業務提携を迫るIT 企業に対しては,民放側に拒否反応があると見られている。

一方で,携帯機器でデジタルテレビ放送が楽しめる「ワンセグ」が2006年4月に開始されるのにともない,民放キー局とNTT ドコモなど大手通信業者がサービスの共同開発に乗り出すなど放送と通信,両業界の提携は一気に加速している。

奥田良胤