メディアフォーカス

犯罪被害者保護で発表時の「実名」「匿名」は警察判断

2005年4月に施行された犯罪被害者等基本法に基づく「犯罪被害者等基本計画」が2005年12月に決定された。この計画は,犯罪の被害者等が平穏な生活を営むことができるように,様々な支援や保護が受けられるよう具体的な項目を定めたもので,258項目が決定された。

このなかで,事件・事故等に関して警察が報道機関に発表する場合の被害者等の名前について,「警察は,犯罪被害者の匿名発表を望む意見とマスコミの実名発表の要望を踏まえ,プライバシーや公益性などを総合的に勘案しつつ,個別具体的な案件ごとに適切な発表内容となるよう配慮していく」とされた。つまり,被害者等の名前の発表を,実名にするか匿名にするかは警察判断に委ねられたのである。

日本新聞協会と日本民間放送連盟は,名前の発表を行政がコントロールすることは国民の知る権利にかかわると捉え,「事件や事故を正確に,客観的に取材,検証し,報道するために,実名は欠かせない」「発表された被害者の実名をそのまま報道するかどうか,これはまたまったく別の問題である」として,この項目の削除を政府に申し入れていた。

しかし,基本計画内容を検討してきた「犯罪被害者等施策推進会議」(会長・安倍官房長官)は,メディア側の要請を受け入れず,発表時の「実名」「匿名」の判断を警察庁原案に沿って警察に委ねる決定をした。

基本計画の決定を受け新聞協会と民放連は次のような共同声明(概要)を発表した。 「この基本計画は,遅まきながら,犯罪被害者のための総合的なスタート台となるもので,私たちも評価する。

ただ,その中で,被害者名の発表を実名でするか匿名でするかを警察が判断するとしている項目については容認できない。匿名発表では,被害者やその周辺取材が困難になり,警察に都合の悪いことが隠される恐れもある」

「私たちは,被害者への配慮を優先に実名報道か匿名報道かを自律的に判断し,その結果生じる責任は正面から引き受ける。これまでもそう努めてきたし,今後も最大限の努力をしたいと考えている」

「この項目に対する私たちの危惧に対して,警察側構成員は『従来の私どもの考え方を何ら変更するものではない』と答えている。計画にこの項目が盛り込まれたとしても匿名発表が現在以上に増えることはない。そう確約したものと私たちは受け止める。警察現場で,この項目が恣しい意的に運用されることのないよう,私たちは国民とともに厳しく監視したい」

また,「放送と人権等権利に関する委員会」(BRC)も,2005年12月27日,「これまでメディアの側において犯罪被害者らに対し,無神経な取材や行き過ぎた報道がなされたのは事実」と指摘したうえで,メディアの側もその反省に立って被害防止に努力しており,放送に関してはBRCが多くの苦情を受付けて被害の救済に努めているとし,実名開示の可否は報道関係者と被害者によって「自主的に解決すべきであって,犯罪捜査にかかわる警察に判断を委ねることで解決すべき問題ではないと考える」との声明を出した。

日本雑誌協会も12月28日に,「危険なことはこの条項が一人歩きし,肥大化することだ」とする緊急声明を出した。

奥田良胤