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デジタル時代の公共性の追求3か年のNHK経営計画

不祥事に端を発する受信料の支払い拒否が増え,NHKのあり方が広く問われている中で,NHKは1月24日,2006年度から3か年の「経営計画」を発表した。昨年9月に出した「新生プラン」以後の状況の変化を踏まえ,今後3年間の経営方針と具体的な事業計画を明らかにしたもの。

「経営計画」では,今後も公共放送の変わらない役割を果たしていくとしたうえで,3 年間の基本方針として▼受信料収入の回復を図り,財政の安定をめざす▼信頼される公共放送のため,経営の改革をすすめる▼“NHK だからできる”放送に全力を注ぐ▼デジタル時代にふさわしいNHKのあり方を追求する,の4項目を掲げている。

このうち2005年度の決算見込みで前年度より450億円減収の受信料収入については,2006年度は5,940億円と減収を20億円にとどめ,2007年度,2008年度にそれぞれ100億円ずつ回復させることを目標としている。そして支出を抑制するために,3か年で全職員の 10%,1,200人を削減することや役員報酬,職員給与の削減を行うほか,放送設備計画の見直しをすすめるとしている。

経営の改革については,経営委員会の機能を強化するために,執行部に対する目標管理・ 業績評価を導入することや会長・監事の任命などを検討する「指名委員会」を必要に応じて設置することが盛り込まれている。

執行部の改革として,役員に外部の人材の起用を検討することや「NHK“約束”評価委員会」の評価を事業運営に反映させることをあげている。また政府の「規制改革・民間開放推進会議」の答申でも具体的に求められた子会社(関連団体)の統合や競争契約の推進に取り組むとしている。

放送サービスについては,人々の判断のよりどころとなるニュース番組と災害報道の充実・強化をあげたうえで,時代を見据えた大型シリーズやドラマなど幅広い視聴者層に支持される多彩な番組を展開する方針を示している。

新たなサービスとしては,地上デジタル放送の携帯端末向けサービス「ワンセグ」を今年4月から開始するほか,インターネットに接続された放送受信機に,蓄積を前提とした放送と関連情報を提供する「サーバー型放送サービス」を2007年度中に開始したいとの考えを示した。ただこのサービスの経費に受信料を使うことは,かえって公平ではないとも言えるとして,受益者に負担してもらうことも検討する必要があるとしている。

NHK のあり方については,2011年にアナログ放送が終了し,完全なデジタル時代を迎えるため,その時代にNHKはどうあるべきかという視点から,受信料制度のあり方や,受信料で賄う公共放送の事業範囲,放送波の保有などを検討すると述べている。このうち衛星放送については,2011年を再構築の時期と位置づけ,チャンネル数の整理も含め,総合的に検討するとしている。

NHK をめぐっては,竹中総務大臣の私的懇談会「通信・放送のあり方に関する懇談会」が,1月から検討を始めている。経営計画の発表の記者会見で橋本会長は,「NHKとしての取り組みを,しっかり説明していきたい」と述べた。

塩田幸司