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人員削減と民事手続き導入へ NHKが「新生プラン」

NHKは,2005年9月20日,信頼回復に向けた「新生プラン」を発表した。

発表の記者会見で,NHKの橋本元一会長は,プランの目的について,視聴者の信頼を一日も早く回復させ財政を再建することと,放送と通信の融合が進むデジタル時代にも公共放送の役割を果たせるよう,NHKが生まれ変わることの2つをあげ,「何人からの圧力や働きかけにも左右されず,放送の自主自立を貫くことが公共放送の使命だ」と述べた。

新生プランでは①視聴者第一主義に立って“NHKだからできる”放送を追求する②組織や業務の大幅な改革,スリム化を推進する③受信料の公平負担に全力で取り組む,の3つを事業運営の柱としている。

このうちスリム化については,デジタル時代に対応できる番組制作力の強化に重点を置いた体制を構築するため,部や局の統廃合,管理部門の縮小などの組織改革を推進し,放送の質の確保を図りながらも,2006年度から3年間で全職員の10%,1,200人を削減するとしている。NHKでは,かつてない規模の人員削減である。また教育テレビ,衛星ハイビジョンの24時間終夜放送を見直すことや,関連団体について時代にふさわしい再編成を行うことを盛り込んだ。

受信料については,単身赴任者や学生の料金割引制の新設など,より公平で合理的な体系を検討するとともに,口座振替利用者,長期支払い者への優遇施策を実施するとしている。

そして未払い者に対し,受信料制度の意義やNHKの改革について丁寧に説明し,それでも理解が得られない場合に,民事手続きによる受信料の支払い督促の活用を検討するとしている。具体的には,支払いを拒否している受信契約者に,簡易裁判所を通じて督促状を送るというもので,橋本会長は「あくまで,努力してもなお支払ってもらえない場合の最後の手段だ」と説明した。

こうした対策に踏み切る背景には,NHKの厳しい財政事情がある。一連の不祥事で,受信料の支払い拒否・保留の件数は,9月末で130万件に達する見込みで,これに受信契約の増加目標に対する遅れなどを含めると,受信料の減収は2005年度上半期で237億円,年間では500億円に達する可能性があるという。

またNHKは,放送法で定められた受信契約をしていない未契約が9月末の推計で958万件,1年間以上の滞納が3月末現在で139万件あり,支払い拒否などを含めると,契約対象の29.5パーセントが受信料を支払っていないことになるという数字を初めて明らかにした。

この再生プランの内容について,NHKは発表当日と翌日に総合テレビやラジオ第1などの特別番組で放送し,意見の受付先を告知した。これに対して,翌日の午後5時までに視聴者コールセンターなどに寄せられた意見は,電話,メール,ファックスで計4,629件にのぼった。民事手続き導入についての意見が多く,「支払い拒否は不祥事が原因なのに,納得できない」,「不公平をなくすには必要だ」などの意見が寄せられた。

NHKは,さらに幅広く意見を聞いた上で,2006年度から3年間の「経営ビジョン」をまとめ,来年1月に公表することにしている。

塩田幸司